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第十三章:再会、そして

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

世界の真実を知り、新たな目的を見出したシンタロウ。

敗北の淵から、反逆の狼煙を上げたルキウスとルナ。

別々の道を歩んでいた彼らの運命が、ついに再び交差します。

一ヶ月ぶりの再会。

彼らは何を語り、そして、どこへ向かうのか。

物語が大きく加速する第十三章『再会、そして』、お楽しみください。

 あれから、一ヶ月が経っていた。


 俺は、アキラの聖域で、新たな「訓練」の日々を送っていた。

 ルキウスにやらされていた、ただ痛めつけられるだけのそれとは全く違う。アキラが俺に教えてくれたのは、自分自身の力を「理解」し、「制御」するための方法だった。


「いい、坊や? あなたの力は魂そのもの。いわば、使い切りの超高性能バッテリーよ。鉄槌の砦であなたが倒れたのは、残量1%で強制シャットダウンがかかったから。これからは、常に自分の魂の『残量』を意識しなさい。無駄撃ちは、死に直結するわよ」


 アキラの指導は、どこまでも的確で、合理的だった。


 俺は彼女の元で、力の効率的な使い方、魂の燃焼を最小限に抑える技術、そして、何よりも自分自身の精神を律する方法を学んだ。


 絶望は、消えていない。俺が偽物であるという事実は、変わらない。

 だが、今の俺には「召喚魔法を消し去る」という、揺るぎない目的があった。その目的が、俺を冷徹な一本の槍へと変えていった。


 その日、俺が庭園で精神集中の訓練をしていると、アキラが面白そうに言った。


「あら、お客様みたいよ」


 聖域を覆う結界が、複数の人間が近づいてくるのを感知していた。

 アキラはそれを拒むでもなく、ただ楽しそうに成り行きを見守っている。


 やがて、森の木々の間から、見覚えのある二つの人影が現れた。

 一人は、傷つきながらも、その鋭い眼光を失っていない、白銀の髪の将軍。


 そして、もう一人は――。


「ルナ……」


 俺の口から、無意識にその名が漏れた。

 彼女は、以前よりも少しだけ逞しくなったように見えた。だが、俺の姿を認めた瞬間、その瞳が大きく見開かれ、みるみるうちに涙で潤んでいく。


「シンタロウ様……!」


 彼女は、全てをかなぐり捨てるように、俺に向かって駆け出してきた。

 俺は、そんな彼女を、ただ呆然と見つめていた。


 この一ヶ月、感情に蓋をすることを覚えてきた。だが、彼女の姿を見た瞬間、その硬い蓋が、いとも簡単に砕け散った。


 安堵。喜び。そして、焦がれるような愛おしさ。

 それらが、借り物のデータだとしても、構わない。

 この感情だけは、俺のものだ。


 駆け寄ってきたルナの体を、俺は力強く抱きしめていた。


「……無事だったんだな」

「はい……はい……! シンタロウ様こそ……!」


 お互いの無事を確かめ合うように、言葉にならない声が漏れる。温かい涙が、俺の肩を濡らした。


 しばらくして、俺たちはゆっくりと体を離した。

 その後ろでは、ルキウスが腕を組み、静かに俺たちの再会を見つめていた。


 俺は、ルナの肩を抱いたまま、かつての主君と向き合う。

 彼の目は、俺を射抜くように見つめていた。


「……いい目をするようになったな」


 ルキウスが、静かに言った。


「もはや、ただの人形ではない。自分の意志で戦う、一人の戦士の目だ」

「あんたも、随分と落ちぶれたみたいだな。敗軍の将軍様」


 俺は、皮肉を込めて返す。

 ルキウスは、フッと自嘲気味に笑った。


「違いない。だが、そのおかげで自由の身だ。……カエサルに反逆するためのな」


 俺たちの視線が、交錯する。

 もはや、そこに主君と道具という関係はなかった。

 同じ敵を見据える、二人の反逆者。


「俺の目的も同じだ。カエサルを討ち、召喚魔法をこの世から消す」

「……そうか。ならば、話は早い」


 俺たちの間に、沈黙が流れる。

 目的は同じ。だが、互いにあまりにも多くのものを失いすぎた。


 その沈黙を破ったのは、傍観していたアキラだった。


「はいはい、感動の再会と、男同士の腹の探り合いはそこまで。で、これからどうするの? あなたたち二人だけで、カエサルに勝てると思ってるわけ?」


 アキラの言葉に、ルキウスが答えた。


「無論、思わん。我々の戦力はあまりにも少ない。このまま首都へ向かっても、犬死にするだけだ」

「じゃあ、どうするんだ?」


 俺が問う。

 ルキウスは、まるで世界地図でも見るかのように、遠い東の空を見つめた。

 そして、誰もが予想しなかった、あまりにも大胆な次の策を口にした。


「兵力が足りないのなら、借りればいい」

「借りる? どこから」

「この大陸で、我々と同じくらいカエサルを憎み、そしてカエサルが最も恐れるほどの軍事力を持つ勢力が、一つだけある」


 俺は、息をのんだ。

 ルキウスが言わんとしていることに、気づいてしまったからだ。


「――我々は、東方部族連合『ガルディアン』と手を組む」


 それは、昨日までの敵と、同盟を結ぶというに等しい、狂気の沙汰としか思えない作戦だった。

 だが、その瞳には、確かな勝算の光が宿っていた。


 俺たちの、本当の反逆が、ここから始まる。


第十三章 了

第十三章、お読みいただきありがとうございました!

ついに、シンタロウ、ルナ、ルキウスの三人が再会しました。

もはや主君と道具、主人と奴隷ではない。

同じ目的を持つ、三人の反逆者として。ここからが、本当の始まりです。

しかし、ルキウスが提示した次なる一手は、あまりにも無謀で、常軌を逸していました。

――昨日までの敵、東方部族連合『ガルディアン』との同盟。

憎しみ合う両者が、手を取り合うことなど可能なのか?

そして、誇り高き荒野の民を率いる総帥ゼファル・クロムウェルとは、一体どのような人物なのか。

敵か味方か。壮大な交渉が始まります。

この先の展開が気になる!と思っていただけましたら、ぜひブックマークやページ下の☆での評価で応援をよろしくお願いいたします!

それでは、また次回の更新でお会いしましょう!


こちらの作品は『異世界に召喚された俺は「壊れた人形」と蔑まれた偽物の賢者らしい。~疲労を知らない肉体と規格外の怪力で、腐った国家の道具にされた僕は、やがて自らの存在を賭けて反逆の剣を振るう~』のダイジェスト版です、内容も微妙に違います、もしご興味が湧きましたら


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