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第一章:運命の召喚

はじめまして、作者の品川太朗です。

数ある作品の中から、この物語の最初のページを開いてくださり、誠にありがとうございます。

誰もが一度は夢見るかもしれない、異世界への召喚。

しかし、もしその運命が、祝福ではなく呪いから始まるものだとしたら――。

これは、全てを奪われ、偽りの存在として生まれ変わった一人の少年の物語。

主人公シンタロウの、理不尽な旅の始まりを、どうかお楽しみください。




「シンタロウ、起きなさい! もう七時よ!」

母さんの声が、分厚い壁の向こうから聞こえる。枕に顔を埋め、もう五分、いや三分だけと神に祈る。だが、無慈悲に鳴り続けるスマホのアラームと、遠慮なく部屋のドアを叩く音に観念し、俺――新堂信太郎しんどうしんたろうは重い体をベッドから引き剥がした。

カーテンを開けると、見慣れた住宅街にまぶしい朝日が降り注いでいる。

いつもと同じ、平凡な朝。

いつもと同じように遅刻ギリギリでトーストを喉に押し込み、「いってきます」と叫んで家を飛び出す。

通学路を駆け抜け、角のコンビニで幼馴染のケンタと合流する。

「よお、シンタロウ。昨日言ってたソシャゲのガチャ、神引きしたわ!」

「おー、そりゃ良かったな」

他愛のない会話で笑い合う。学校に着くと、教室はすでにクラスメイトたちの賑やかな声で満ちていた。昨日のテレビ番組の話、週末のデートの計画、そして窓際の席で静かに本を読む、俺が密かに憧れているクラスメイトのユイの横顔。

中の下くらいの成績。中の下くらいの運動神経。可もなく不可もない人間関係。

それが俺の立ち位置で、それなりに居心地は良かった。

午後の授業は、それに加えて強烈な眠気との戦いになる。必死に船を漕ぐのを堪えていた、まさにその時だった。

突如として、視界が真っ白な光に包まれた。

「――ッ!?」

耳をつんざくような甲高い金属音が響き、体が宙に浮くような感覚に襲われる。熱いのか冷たいのかも分からない風が吹き荒れ、俺はジェットコースターに乗っているかのような非現実的な感覚に、ただ身を任せるしかなかった。

次に目を開けた時、そこは見慣れた教室ではなかった。

巨大な広間だった。

磨き上げられた大理石の床。天を突くほど高い天井を支える、何本もの巨大な円柱。壁には見たこともない幾何学的な紋様が刻まれ、中央には重厚な石の祭壇が鎮座している。まるで、ファンタジー映画のセットに迷い込んだかのようだ。

その祭壇を囲むように、白衣をまとった十数人の男たちが立っている。彼らは俺の姿を認めると、一斉に何かを叫び始めた。日本語ではないその言葉は、ノイズの塊としてしか耳に届かない。

困惑と恐怖が、心臓を直接掴むように締め付ける。

無意識に後ずさった俺の背中が、すぐ後ろにあった円柱に、こつんと軽く触れた。

その瞬間。

ゴッ、という鈍い音と共に、大理石の円柱に人の頭ほどもある巨大な穴が開いた。

「へ……?」

軽く寄りかかっただけなのに。

俺は自分の背中と、穴の開いた円柱を交互に見つめ、さらに混乱した。

「XXXXXXXXX-XXXXXX!」

研究員らしき男の一人が、興奮した声で何かを叫んだ。

(やべ、弁償させられるのか? いくらするんだよ、これ……)

焦りと驚きで自分の手を見つめることしかできない。

しかし、研究員たちの表情は怒っているどころか、むしろ狂喜していた。その声は怒りではなく、歓喜に満ちているように聞こえる。

「え、これ……俺がやったのか?」

信じられない気持ちで、俺はもう一度、穴の開いた円柱にそっと指を近づけてみる。指先が触れるか触れないかのうちに、大理石の表面がさらにひび割れ、ぱらぱらと破片が床に落ちた。

「うわっ!」

思わず手を引っ込める。自分の体が、まるで別物になってしまったかのようだ。こんな異常な力は、俺の記憶には一切ない。

その間も、研究員たちは興奮した様子で何かを話し続けている。彼らの視線は俺に釘付けで、まるで珍しい動物でも見ているかのようだった。

(もしかして、この人たち……俺が柱を壊したことに、喜んでる?)

彼らの表情は、怒りや非難ではなく、驚きと強い期待で輝いていた。

だが、俺にはその理由が全く分からない。なぜこんな場所にいるのか。この異常な力は何なのか。頭の中は、疑問符で埋め尽くされていた。

その時、一人の研究員が他の者たちを制するように手を上げ、少し離れた場所に立っていた少女に何かを指示した。

少女は他の研究員たちとは違い、簡素な麻の服をまとっている。怯えたような表情で俺を見つめていたが、指示されると小さく頷き、おずおずとこちらへ歩み寄ってきた。その瞳には、不安と、かすかな希望が入り混じったような色が浮かんでいる。

少女は俺の目の前まで来ると、深呼吸をして、震える声で話し始めた。

「あ、あの……」

紛れもない、日本語だった。

「わ、私は……ルナ、と申します。元老院の命により、あなた様……三代目の賢者様の、通訳を務めさせていただきます」

「日本語が……話せるの!?」

ようやく意思疎通ができる相手が現れたことに、俺は安堵と驚きが混じった声を上げた。ルナは俺の反応に少し戸惑いながらも、こくりと頷く。

「はい。二代目賢者様が残された書物で、勉強いたしました」

「二代目賢者? それに、三代目賢者って……一体何なんだ、これは?」

矢継ぎ早の質問に、ルナは困ったように眉を下げた。

「申し訳ありません……詳しいことは、わたくしでは……。あなた様は、この世界ウルビュスの危機を救うために召喚された、とだけ……」

まるで物語のような大仰な言葉に、俺は呆然と立ち尽くす。

異世界の危機を救う「賢者」? そんな馬鹿な話があるものか。俺はただの平凡な高校生だ。

「えっと……俺、シンタロウ。ただの高校生なんだけど……」

ルナは俺の言葉に少し目を丸くしたが、すぐに表情を引き締め、もう一度深々と頭を下げた。

「シンタロウ様。改めて、ウルビュスの世界へようこそ……」

その瞬間、自分が本当に異世界へ来てしまったのだと、俺は理解せざるを得なかった。

心臓が、経験したことのない不安と、ほんの少しの期待で大きく鳴り響いていた。


第一章 了



第一章『運命の召喚』をお読みいただき、ありがとうございます。

平凡な日常から一転、主人公シンタロウは理不尽にも異世界へ召喚されてしまいました。

謎の怪力、そして『賢者』というキーワード。彼の戸惑いが少しでも伝わりましたでしょうか。

ようやく言葉の通じる少女ルナと出会えましたが、ここからが本当の始まりです。

果たして「ウルビュスの危機」とは何なのか?

シンタロウに与えられた力の本当の意味とは?

そして、彼は元の世界に帰ることができるのか?

次回、彼の新たな生活が、否応なく始まります。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ぜひブックマークやページ下の☆での評価をいただけますと、執筆の大きな励みになります。

それでは、また次回の更新でお会いできますことを願っております。


こちらの作品は『異世界に召喚された俺は「壊れた人形」と蔑まれた偽物の賢者らしい。~疲労を知らない肉体と規格外の怪力で、腐った国家の道具にされた僕は、やがて自らの存在を賭けて反逆の剣を振るう~』のダイジェスト版です、内容も微妙に違います、もしご興味が湧きましたら


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