第九話
僕は時の旅人。
ある旅の最中、僕は一人の少女と出会う。
少女の名前は相原里美。
里美のおにぎりは・・・地獄だった・・・。
僕はいらぬ誤解をうけた。
雨の降る日、里美は来なかった。
僕は還る決意をした。
再び、彼女は僕の前に現れた。
僕は里美に会い続ける。
初めて相原の病室を訪れてから数日が経った。
なんだかんだで僕は彼女の部屋に訪れている。
「はい、おにぎりです!」
「待ってました!」
相原はあの日と変わらぬように、おにぎりを作っていた。
明太子おにぎりだけは相原に食べさせた。
あんなものとてもじゃないが食えんからな。
・・・。
「そういえば・・・」
「ん~?」
「時時さんって本当は何をしている人なんですか?」
「僕は…」
本当の事を言うべきだろうか。
言ったところで信じてくれるとも限らないが…って、時空間へ還る決心をしたんだ、別にこんな事で真剣に悩む必要はないか。
「僕は…時の旅人なんだ」
「時の…旅人?」
「あぁ色々な時間軸を旅するんだ」
「色々な時間軸を…」
「その気になれば未来にも過去にも行けるさ!」
「凄い…、時時さん、私にもなれますか?」
相原は真面目に聞き返してくる。
「なれるさ、だが時の旅人も名前の通り旅人だ、相応の体力も必要になる…って、まさか信じてるのか?」
「はいっ、だって素敵じゃないですか…時を旅するなんて…」
「そっかな…」
「私もなりたいな…、時時さんと…一緒に…」
「え、何か言った?」
「いえっ、なんでもないです」
少し顔を赤くして相原は答えた。
嘘か誠かは、わからないが相原は時の旅人を信じた。
こんな物語みたいなものを信じるなんて…、それだけ無垢って事か。
「だけどな、時の旅人になるって事はこの世界の住人ではなくなるって事だぞ」
「この世界の住人ではなくなる・・・?」
「あぁ・・・この世界の親も友達も、自分の存在さえも捨てなくちゃならないんだ、それが掟でもあるからな」
「・・・時時さんも・・・時時さんも理由があって旅人さんになっているんですか?」
「僕は・・・」
1、理由なんてない、そこに道があるから旅人をしてるのさ!
2、理由がある
3、愛してる・・・君を・・・もう離さない!
「愛してる・・・君を・・・もう離さない!」
「・・・えぇ!?いや、そんなでも・・・私、えっ、だってまだ準備が・・・」
「いや忘れてくれ」
準備ってなんぞなもし?
「僕は・・・、かつてはこの世界に住んでいたんだ、まだ小さい頃の話だ・・・」
僕が小さい頃の話。
僕は兄弟はいなくて一人っ子だった。
父がいて母がいて、でもそれだけだった。
両親は一切僕に構ってはくれなかったんだ。
だから僕は一人で旅人ごっこなるものをしていた記憶がある。
簡単な話、世界を旅している気分に浸っているだけだ。
その頃の僕の友達は世界地図だけだったのを覚えている。
そんなある時だった。
両親が押し入ってきた強盗に殺害されたのである。
いつもの日常のそこには非日常と化した「それ」があった。
決して大好きとは言えないが、それでも両親が死んだ事実に僕は泣いた。
それからは親戚中をたらい回しにされた。
誰にも心を開かなかった僕を快く歓迎してくれる人はいるはずもなく、いつの間にか施設に入れられたのを覚えている。
施設に行っても友達と呼べる人はいなかった。
勿論、誘ってみたりもした。
だが旅人ごっこしか知らない僕の遊びに誰一人として一緒に遊ぶ気になる奴なんていなかったんだ。
この頃からだっただろうか。
僕が他人に対して心を開かなくなったのは。
他人と接点を持ってもなんの情もわかなくなっていたのだ。
施設に閉じこめられた生活は「旅」なんかとはかけ離れた無縁の生活だ。
いつしか僕はこの施設という名の監獄から逃げる決心をする。
終




