第三話
僕は時の旅人。
ある旅の最中、僕は一人の少女と出会う。
少女の名前は相原里美。
待ち合わせをしていた少女、相原里美は弁当箱を広げていた。
しかもいわゆる弁当箱ではなくバスケットってやつだ。
結構お洒落な上に豪勢だ。
旅人風情がタダ飯食える上に豪華な昼食とあったら最高だろう。
しかしそんな期待とは裏腹にその中身は・・・。
「たーんと召し上がれっ!」
「ぁ・・・ぁぁ・・・・・・」
おにぎりばっかりだった!
上も下も右も左も全部おにぎりしかなかった。
「相原さん、他の・・・例えばおかずとかって無いの?」
「おかずなら、おにぎりの中にありますよ!」
「・・・・・・」
やはり、おにぎりなのか。
いやしかしタダ飯食える以上、贅沢な事は言えないか。
とりあえず近くにあったおにぎりを食べてみた。
中身は鮭だ。
「もぐもぐ・・・」
別に「もぐもぐ」なんて良いながら食べているわけではない。
「どうですか?」
「ほぉ・・・」
なかなか美味い。
おにぎりに上手も下手もない気がするけど素直に美味い。
「こりゃ美味い・・・」
「良かったぁ~、遠慮しないでどんどん食べてくださいね!」
とりあえず取ったやつの隣にあるのを取ってみる。
このおにぎりの具はなんだろうか。
おにぎりの定番の具というと昆布か、梅も捨てがたいな。
とりあえず大きく口を開けてパックリとかぶりついた。
「・・・・・・・・・・・・うごぉっ!」
なんだこれは。
口の中が・・・熱い、痛い、辛い・・・。
な、なにが・・・起こったんだ・・・。
薄れゆく意識の中で相原里美の声が響いていた・・・。
目を覚ました頃には日が暮れていた。
相原里美の姿は既になくメモだけが残されていた。
「ごめんなさい 時間なのでもう行きます 良かったらまた明日も会ってください」
と、書かれていた。
自分の口に広がる熱辛痛でそれどころじゃなかった・・・。
ふと手に何かを持っているのに気がつく。
見るとさっきまで食べていたおにぎりを握っていた。
いや、握りつぶしていた。
相当な苦しみがあった事が容易に想像できる・・・。
その、おにぎりの具は「明太子」だった。
「嘘だろ・・・」
まさか明太子がこんなに辛いというのか!?
辛子明太子にも丁度良い程ってもんがあるだろうに。
一体どこにこんな辛い明太子があるというのだ。
いや、あいつの味覚はどうなっているんだ・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
程よく落ちついてから夜の町へと散策に乗りだす。
このあたりはあまり夜の町に活気がないようだ。
良い意味では落ちついていているのだろうが、・・・まぁ田舎って事だな。
随分と歩いたが大きな建物は高校らしき学校と、保育園、その近場にある町中にしては大きな山、そして相原がいる病院か。
その他、古本屋とかゲーセンとかはあったがいまいち活気がなかった。
夜の町ってこんなものなのか。
今度、暇があった時はもっと都会の方に行ってみよう。
結局は特に面白い事もないので帰りの道へと戻る。
帰りといっても公園のベンチでまた野宿なわけだ。
まぁ野宿は慣れているから良いんだけど。
外で寝るのも慣れるとヤミツキになるぞ。
「但し、保証はしないから気をつけような!」
一体誰に言っているんだ。
一応時空間に戻れないかどうか試してみる。
しかし結果は一緒で全く反応もない。
僕自身の時力が無くなっているわけではないのに。
時空間で何かがあったのだろうか。
いずれにしても人間界にいる僕にはどうにもできない問題だ。
明日も相原に会ってみよう。
終