最終話
僕は時の旅人。
僕は結局、その扉の前にいた。
悩んだ末に僕は僕にとって一番弱い選択をしたのだ。
その扉をノックする。
「はーい?」
僕は失礼ながら何も答えずにその扉を開けた。
「・・・やっと・・・来てくれましたか」
「・・・あぁ・・・」
「里香が来たという事は・・・貴方がいるって事だものね」
「・・・そうだな」
里香は里美の膝の上で静かに寝息をたてていた。
「思えば・・・僕たちが揃って里香を見るのはこれが初だな」
「あ、そういえばそうですね」
「・・・怒って・・・ないのか?」
「何がです?」
「僕が突然いなくなってしまった事」
里美は里香の頭を撫でながら目を瞑った。
「怒っていません」
「・・・何故?」
里美のその答えは僕にとってはとても辛い答えだった。
いっそ怒っていてくれれば、恨んでいてくれれば、里美の中で僕は悪者になっていれば・・・そう考えるのは僕の逃げなのだろうか。
「だって・・・私は一緒にかけおちしたあの時から時時さんを信じていましたもん」
「っ・・・、信じて、信じて待って、その最後の答えは死だった・・・それなのに里美は僕を信じていられたのか?」
「・・・それは貴方の時代の私にしか、ほんの少し先の未来の私にしかわかりません・・・でもきっと信じていたと思います」
僕は気づかないうちにうっすらと涙を流していた。
最後の最後まで信じて待っていてくれた。
僕は彼女のそんな気持ちを8年間の無駄な時間と共に過ごしてしまっていた。
彼女のそんな一途な純粋な気持ちはただ僕の胸を締め付けた。
「時時・・・さん?」
「ごめん・・・本当に・・・ごめんなさいっ!」
僕はひたすらに彼女に許しを求めた。
そうやって逃げていないと僕の心は締め付けられてやがて爆発してしまいそうだったから。
「時時さん、私は元から時間のない人間だったんですよ・・・」
「うっ・・・うう・・・くっ・・・!」
「私の時間は貴方と会ってから1年間、貴方に出会わなければただの1年間を普通に過ごしただけだったんです・・・でも私の1年間は貴方に出会えて誰にも負けない輝きを見せられたと思っています・・・だから・・・だから私はその輝きをもってお星様になります」
「里美・・・」
「もう本当に私に時間がないから・・・だから聞かせてほしいです」
「・・・・・・」
「時時さんの、気持ちを・・・」
僕の気持ち。
そんなものは決まっている。
あの時から、僕は本当は君に会ったあの時から・・・。
「僕の気持ちは・・・」
1、・・・・・・・・・
2、・・・・・・・・・
3、・・・・・・
・・・馬鹿、選択肢なんて必要はない。
「この時の流れの中で、どんな時間が経っても僕は君を愛している・・・」
「時時さん・・・」
やっと終わった気がする。
決して綺麗な形でもないけど、他人にはわからないかもしれないけど。
僕たち家族の旅は終わって、ここから始まるのだ。
時は長い。
それこそ何百年、何千年、何億年以上。
そんなものからすれば僕らの旅はほんの一握りの星の瞬きのような一瞬なのかもしれない。
でも、僕らはそれを見失う事はないだろう。
僕らの道は君が照らしていてくれるから。
照らされたその道を僕が紡いでいく。
紡がれたその道を、僕らの子が歩んでくれるから。
僕らの時という名の歴史は。
受け継がれていくだろう。
僕らは時の旅人。
完




