第二話
僕は時の旅人。
ある旅の最中、僕は一人の少女と出会う。
「まいった・・・!!」
非常にまいっている。
何故なのかはわからないが、時の旅人達の住処である時空間へと還れない。
ちなみに時空間というのは現世の人間が住んでいる「この世」と死んだ人間の住んでいる「あの世」の間に位置する場所である。
物好きな人間にもわかりやすくいうなら、「この世が人間界」「あの世が霊界」そして僕たち時の旅人が住んでいるのが「時空界」といったとこだ。
いつもなら自分の意志でいつでも時空界に戻る事ができるのだが、還れなくてまいっているのだ。
とりあえず昨日、目が覚めたベンチに腰掛ける。
行く宛も無いのでこのベンチを寝床にした。
いわゆる野宿ってやつだ。
旅人っぽくてかっこいいだろ?
「って独り言かよ・・・やばいな・・・」
まぁ良いか。
別に取り入って急がなければならない用事が時空にあるわけでもない。
昨日の女の子とも約束してしまったわけだし待つのも良いかもしれない。
「しっかし・・・」
まだ舌がチクチクする。
本当に昨日のアレはなんだったのか?
真面目に毛虫なんか食べちゃったのか??
だとしたら病院とか行かなくちゃいけないのかな???
しかし病院の人に「時の旅人です」なんて言ったって信じてもらえるだろうか。
「無理だな」
やはり病院に行くのはやめておこう。
変な問題を抱え込むよりはここでおとなしく女の子を待とう。
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
遅い。
もう時刻は14時になった。
日差しが暑い・・・、そういえば気にしてなかったけど今の季節はなんだ。
突然の出来事で目が覚めたらここにいたからそもそもここが一体いつの時代なのかが全くわからない。
だがいわゆる昔な匂いがしないとこを見るといわゆる現代ってやつだな!
・・・だからその現代がいつなのかがわからないから困ってるんだって!!
・・・いけない・・・さりげない暑さと空腹で頭が混乱してきた。
「お待たせしました」
声がした。女の子の声だ。
振り向くと昨日の少女が息を切らせて立っていた。
「ごめんなさい・・・待ちましたか?」
1、いや今来たところさ!
2、めちゃくちゃ待ったぜ・・・
3、ご飯にする?お風呂にする?それともワ・タ・シ?
「いや今来たところさ!」
僕が持てる最大限の爽やかスマイルを少女に見せつけた!
「・・・あっ・・・えぇ・・・?」
「すまん・・・忘れてくれ・・・」
つーか、なんだこのゲームみたいな選択肢は!?
しかも3番の選択肢ってなんだよこれ。
もう今後一切こんな選択肢は出すまいと心に決めた。
「で?」
「えっ?」
「いや、どうしたんだよ遅くなって、少し心配したぞ」
「・・・あっ、ごめんなさい検査が少し長引いちゃって・・・」
検査・・・そんなに具合が悪いのだろうか。
「大丈夫なのか、そんなに重い容態なのか?」
「いいえ、大した事は無いんですよ」
「・・・そっか、変な無茶だけはするなよ」
「はいっ、ありがとうございます」
少女は笑顔で返した。
だから僕も爽やかスマイルで返した。
・・・どうやら少し引かれたようだ・・・。
「そういえばまだ名前を聞いてないですよね?
「名前?」
「はい、お名前はっ?」
名前か。
正直なとこ名前だけはあまり交換したくはなかった。
時の旅人の性質上ゆえなのだが、名前を知って少しでも情がうつるのが恐い。
時空間の魔法・・・時力というのだが、この時力を使い僕らは人間界に留まる事ができる。
しかし時力の効力は人間界の時間単位でわずか1年。
もしも1年間以上そこに留まろうとすると強制的に時空間へと転移させられて、その強制転移させられた時間軸から約5年間の間は人間界に入る事ができなくなってしまう。
時の旅人は自由だが、制約が意外とうるさいのだ。
つまりはあまり自由と呼べないのかもしれないが。
「・・・あのぉ~?」
「・・・はっ!?」
「どうしたんですかぁ?」
「いやすまん、ボーっとしてた」
少女はほっぺたをプクーっと膨らませて怒っているようだった。
しょうがない・・・教えてみるか。
時空間に戻れるようになったら適当な嘘をついて別れれば良いだけの話だしな。
「時時」
「・・・はい?」
「だから時時だって」
「ジジさん?」
「違う、とき、とじかんのじ、とかいて時時、ときじ、だ」
「はぁ~、時時さん」
「かっこいいだろ?」
「私は里美です、相原里美」
って無視かよ。
無視されたのはちょっと悲しかったが少女の名は相原里美というのはわかった。
終