第十三話
僕は時の旅人。
見慣れた景色を飛び出して、僕らは世界に飛んでみた。
あれから3ヶ月が過ぎた・・・。
「里美・・・ただいま」
「おかえりなさい・・・」
僕の彼女を呼ぶ名称は相原から里美に変わった。
この町についてから二人で暮らしている。
家は正直に言うとオンボロアパート。
でも僕らには丁度良かったのかもしれない。
あれから3ヶ月・・・季節は10月を向かえた。
「時時さん・・・」
里美はおかえりのキスをしてくれる。
「やめろよ、恥ずかしいな」
「誰も見てないですよ・・・」
事の発端はアパートを借りるところに遡る。
「あんれー、あんただち随分どわげー(若)ねー」
「はぁ・・・それであの~・・・」
「部屋かりたいんがね?」
「えぇ、でもお金無いんですよ」
「むー、あんだだじ夫婦かいね?」
『えっ!?』
アパートの大家さんの言葉に二人で意表を突かれ赤面する。
「なんら、タダで貸したるけんね、但しそっちの旦那さん借りるけんね!」
「だ、旦那さんって・・・」
相原は旦那さんって言葉に反応し、さらに赤面してうつむいてしまう。
とりあえず、そんなこんなで僕たちは部屋を借りられた上に給料付きの仕事もつけてもらえた。
こんな運が良くて良いのかとも考えたがなるようになってしまったので仕方がないか。
一応、「夫婦」という形で家を借りているので僕の名前も「相原時時」とされた。
その際に相原からは「夫婦なんだから・・・」という理由で名称を相原から里美にしてくれ、と頼まれたのだった。
この3ヶ月間で相原の体調は著しく弱くなった。
これは里美本人から聞いた話なのだが、やはり彼女は重い病気だった。
それだけならまだ良いのだが、僕は彼女からその事実を聞いてしまった。
「私の寿命はもう1年無いんだって・・・だから私のパパは私の病気を治せる医者を捜していました、外国に行こうって誘われました・・・でも行けなかったんです・・・」
里美の寿命は1年。
しかもその宣告をうけたのは僕と初めて出会った日。
あれから総合計するとすでに4~5ヶ月の期間が過ぎていた。
もうほぼ半年・・・順調にいってもあと半年しか生きられない。
だが、それは病院での適切な治療を受けての話だろう。
僕はあの時、里美を外に連れ出す事をしなければ良かったのだろうか。
「里美・・・何か作るけど何か食べたいものあるか?」
「明太子・・・」
「明太子か、うんっと辛くするからな、ちゃんと食べろよ」
「大丈夫・・・明太子好きだから・・・」
なりゆきでこんな生活を初めてしまったけど僕はやめれなかった。
この3ヶ月間で彼女の色々なものを知り、触れてしまったからだ。
僕はこの3ヶ月間で大きく彼女に・・・里美に惹かれていってしまった。
彼女を幸せにしたい、そんな考えは僕の傲慢だったのだろうか。
「ほら、食べやすいようにいつもの明太子雑炊だぞ」
「時時さん、どんどん作るの上手になってる・・・」
「馬鹿、当たり前だろ」
僕はこんな生活でも幸せだった。
「ちゃんと・・・食べたら薬飲めよ」
「わかってます・・・!」
薬も気休めだろう。
里美は僕の知らない所で戦っている。
あの時からずっと。
終