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これは相談したくなる


「あなたは魔力の低い、二年上の上品で賢く諦念的な女性を妻にすると国が安定するでしょう。魔力が高まり続けているせいで、王侯貴族には魂と心に歪みが増え続けているのです。あなたは母の愛情に飢えているところがあるので、絶対に年下ではなく年上の女性が相性がいいです。王妃としての気品と賢さ、これは一般的な意味ではありません。アネモネ系のものです」

「諦念的な、というのは?」

「あなたに過度な期待を寄せない。だからかなり客観的な第三者視点であなたをサポートしてくれます。あなたに期待をしてくれないので、あなた自身が相手の心を開かせる努力をしなければなりません。その努力はあなたの人生を豊かにし、あなた自身を高めてくれます。あなたがその女性に認められた時、本当の意味で平和な国となるでしょう。それはあなたが賢王として国を建て直した瞬間となります」

 

 それは――ナターシャさんの語るものは、『予言』のようだった。

 レオンクライン様もそう思ったのだろう、噛み締めるように少しだけ苦しそうな、泣きそうな表情のあとにゆっくりと目を閉じる。

 そして瞼を開いた時、覚悟を決めたさっぱりとした表情になっていた。

 

「素晴らしい女性が、まだ我が国にはいるのですね」

「ええ、その女性を見つけるところからがあなたが王となる第一歩となるでしょう。見つけづらい場所にいますが、あなたがちゃんと目を開いて探せば必ず出会うことができます。今度は相手の言葉をちゃんと聴くこと。“聞く”ではなく、“聴く”です。そして、あなた自身のことを伝えて理解してもらえる努力を惜しんではいけません。あなたがすべきなのはありとあらゆる『対人の努力』です。それをすることで得られなかったものが得られます。間違えてはいけないのは、あなたの伴侶となる女性はあなたのことを絶対に裏切ることのない味方であるということ。……彼女はもう、諦めている人なのです。裏切る以前に、あなたは期待さえされていない。あなたとの距離はとても遠いですが、あなたの心が彼女に伝われば少しずつ彼女もあなたに信頼を置いてくれるようになるでしょう。彼女の信頼はあなたの自信となります。愛情と信頼があなたのを満たしてくれるようになります。絶対に裏切らない人からの愛と信頼です」

 

 そこまで言われて、レオンクライン様が強く頷く。

 聞く限りなかなかに困難な道のような気がするが、王道とはそういうものだ。

 レオンクライン様ならばきっと果たしてくださることだろう。

 シルバーが小さなペンダントのようなものを真ん中のカメラ部分の下から吐き出して、『国王治癒が必要になりましたら、こちらのペンダントをお使いください。真ん中の石を右に回すと、通信が開くようになっております』と使い方を説明。

 

「色々力になってくれたこと、心より感謝いたします。このお礼はいつか必ず」

「ええ、感謝してください。なんだかあなたは忙しすぎて過労になりやすいですから、息抜きや自分や妻に割く時間をとにかく作りなさい。自分の仕事を割り振れるよう人を育てて、特に妻と子をもうけたらその子を自分では少し厳しいと感じるように育てなさい。あなた自身が厳しくしてもあなたの妻が愛を注ぎます。あなたの厳しさは妻の愛情を受けることで子どもにも真意が伝わりますから」

「わ、わかりました」

 

 もうナターシャさんがレオンクライン様の人生の指南役を務めている感じに見えてきた。

 ナターシャさんって占術師のようなこともできるんだなぁ。

 占術のその上、予言だと言うけれど。


「あの」

「なんです?」

「私は最初から彼女とは……その……」

「あなた自身が変化を望むきっかけになるのは今回のことでしたから、まあ、そうですね。あなたがもしももっと早く腹を括っていたら、違う未来もあったと思いますよ。可能性は相当に低いですが。まあ、星の示す運命に従いたくないのであれば抗ってもいいと思いますよ。ろくなことにはならないとは思いますけれど」

「ろくなことには……ならない……。今から彼女にアプローチをしても絶対に間に合わない、と」

「無理ですね。さっき理由も少し話しましたが、あなたは母君からの愛情を受けずに育っているため、年下よりは絶対に年上。愛情深い女性の方が相性がいい。甘やかすよりも甘えたいタイプなんです、あなたが」


 レオンクライン様がスン……と突然死んだような目になった。

 あんな表情、初めて見た……あんな顔ができるんだ?


「アネモネもアレで甘えたいタイプですから」

「へあ!?」

「あなたとは相性があまりいいとは言えないです。あの子も責任感が強くて融通が効かず、真面目すぎて逆に視野が狭くなりやすい。責任のある立場に立たせると、盲目的に猪突猛進を初めていい結果を出せなくなるんです。マルチタスクができそうでできない子なんですよ。あなたとは相性もよくないですから、すっぱり諦めた方がいいですね」


 なぜ急に私が刺されたんですか……!?

 っていうか、わ、私、甘えたいタイプなの!?

 そんなこと初めて言われたんですが!?


「ナターシャ様、わたくしもあとで恋愛運についてお伺いしても……!?」

「自分のことくらい自分で占ってください聖女でしょうあなた」

「ナターシャ様に恋愛運を見ていただきたいんです!」

「チッ。どいつもこいつも。わたし、恋愛相談とか人生相談されるほどまともな人生送ってないって言ってるじゃないですか。リスナーといいオリヴィアといい、なぜそんなに恋愛相談とかしてくるんですかね」


 そりゃあされるだろうな。



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