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治療完了


 いわゆるレオンクライン様の“絶対的な味方”だと思っている。

 そう紹介するとナターシャさんもオリヴィア先輩も「意図的に離されていますね」と目を細めた。


「申し遅れました。わたくしはオリヴィア・リューネルと申しますわ」

「わたしはナターシャ・カルディアナ。まずはオリヴィアが解毒をやってみてくれます?」

「かしこまりました」


 アランディさんをひとまず安心させるためか、ナターシャさんたちも名前を名乗る。

 先程の――二人の言っていた『意図的に離された』のところを詳しく聞いてみたいところだが、まずはレオンクライン様を直していただくのが先決。

 ベッドの横に歩み寄ったオリヴィア先輩が、手をレオンクライン様に向ける。


「残留する瘴気よ、かの者から退け! ホーリーウォール!」


 白い光が円形になってベッドを囲う。

 オリヴィア先輩のヴェールがはためきながら、白い光はより強く輝きながらベッドの中へと集束していく。

 手を組んでただ見守るしかできない。

 どうか、どうかレオンクライン様……元の健康なお姿にお戻りください。


「――いかがでしょうか?」

「レオンクライン様!」


 オリヴィア先輩が手を下ろして、一歩下がる。

 私とアランディ様がベッドの脇に駆け寄ると、レオンクライン様がゆっくりと目を開ける瞬間だった。


「レオンクライン様!」

「おお……! レオンクライン様! 目覚められたのですね!?」

「私は……いったい……ここは……? なんだかずっと、ひどく長く息苦しいところにいたような……」

「ダメですわ。わたくしの治癒魔法では、暗示の後遺症までは……。ナターシャ様、こちらをお任せしてもよろしいですか?」

「あらあらです。確かに洗脳の方は直接的な声がけでしたからね。いいですよ、交代しましょう」


 そう言って、ナターシャさんがオリヴィア先輩と交代して、レオンクライン様の額に触れるとゆっくり上下に動かす。

 うっすらとした光と気配。

 途端に目を見開くレオンクライン様。


「そうだ……私は――!」

「大丈夫ですか、レオンクライン様」

「ああ、大丈夫だ。そうか、私は毒を飲んだのか。……アネモネは……」

「私はこちらです」

「よかった。君も無事だったのだな」

「はい」


 レオンクライン様。

 私のことを、案じてくださった。

 立ちあがろうとしたが、二ヶ月ベッドの上で過ごしていたレオンクライン様は筋力が落ちておつらそう。

 アランディ様とともに左右から支えて起こす。


「レオンクライン様、あの日のことを覚えておられますか?」

「もちろん。アネモネに見惚れている間に入れられたのだろう。なんだか見覚えのない騎士が混じっていたとは、気づいていたけれど――」


 レオンクライン様が見覚えのないと言っていた騎士は、ジャスティーラ嬢が連れていたあの騎士だろう。

 しかし、それでは明確にあの騎士が毒を混入したということなのか?

 だが、やはり王族に毒を盛るのは相当に困難なこと。

 特にあのお茶会では、レオンクライン様の婚約者候補たちが、熱視線をレオンクライン様に送っていた。

 そんな衆人環視の中で、毒を盛るなんて……。


「毒はどのようにして盛られたのか、なにかお心当たりは?」

「毒の魔法だろう。自分の飲み物は確認できる範囲でずっと見ていた。その上味も特に変わりもなく、匂いもなかった。毒魔法使いは国に登録申請をしなければならないはずだから、調べてほしい。……それで、私が眠っている間に起こったことを教えてもらってもいいかい?」

「かしこまりました」


 私はレオンクライン様が毒で倒れられてからすぐに、家族連座で魔海に流された。

 そのため、レオンクライン様が運ばれたあとのことはなにも知らない。

 アランディ様が私の代わりに話してくれたことによると、レオンクライン様は自室に運ばれてすぐに治癒師の治療を受けて一命を取り留める。

 しかし、目を覚さない。

 王家お抱えの治癒師が総力を上げたが変化はなく、時をほぼ同じくして国王陛下も倒れてしまわれた。

 それを聞いて本当に驚いた。

 まさか、アークラッドは実のお父上まで手にかけたのか!?


「父は」

「命に別状はございません。私がお聞きしたのは、レオンクライン様が倒れられた心労とのことでした――が……」


 真相は不明か。

 そちらも調べた方がよさそうだが……。


「第二王子が王位に座るためには、現役の国王と第一王位継承者が消えてもらうしかありません。それさえ果たすことができれば、自動的に第二継承者が王太子になりますからねぇ」

「しかし、毒魔法使いが登録してあるのでしたら足がつくのも簡単なのではありませんの?」

「未登録の毒魔法使いがいる、ということですか?」

「毒魔法使いがそこまで厳重に管理されているのでしたら、逆にこんなことが起こった時に真っ先に疑われるではあまりませんか。それならば未登録の――それこそ暗殺者を雇ったと考える方がむしろ自然では?」


 さすが戦場の聖女。

 考えることが物騒すぎる。


「毒魔法使いはその魔法を覚えるのに資格が必要なのです。毒魔法は解毒魔法とセットでなければ覚えられませんから、その解毒魔法のために覚える者がいるのです。毒魔法と解毒魔法を覚えるためにどうしても禁書が必要不可欠なので、その関係で登録が必須となっているのですよ」

「そうなのですね……。では、毒魔法使いが毒魔法を他の方に教えることも難しいのですか?」

「はい。禁書がなければ毒魔法と解毒魔法は習得が不可能。毒魔法を習得した者が禁書を模写したり、覚えていることを他者に共有しても禁書を通さねば覚えることができません」


 そうなんだ。

 それなら毒魔法使いが毒を盛った犯人でほぼ間違いない、のか?



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