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研修(4)


「アネモネさんは十八歳です?」

「いえ、あの、一応十九歳です」

「地球だと成人年齢ですね。お酒やタバコや公営競技は二十歳からなので、その辺りは遠慮していただきますが……アネモネさんにも“友人”を作ってコミニケーションをちゃんと取れるか練習した方がいいでしょう」

「わ……私も……!?」

「Vtuberって結構コミニケーション能力が必要ですよ」

 

 胸になにかが突き刺さった。

 変な汗がぶわりと出る。

 わ、わた、私……コミニケーション能力、ない……!?

 

「親御さんもご子息ご息女がご友人のお一人もいらっしゃらないの、ご心配でしょう?」

「「それはもう」」

 

 真顔で頷かれた!

 

「センタータワーにもレッスンを受けられる場所はありますし、いぶこーのライバーは全員センタータウン在住なので地球に来る必要はないんですけれど」

「え、あ、そ、そうなのですか?」

「アネモネさんは少し人との関わりを持った方がよろしいのでは?」

『失礼ながら』

「なんでしょう?」

 

 私の真横を飛んでいたシルバーが降りてきて、ナターシャさんに話しかける。

 なにを言い出すのかと思ったら、シルバーは『アネモネは精神状態が“鬱寄り”です。現在対人にストレスを感じやすくなっております』と私の精神状態の話。

 それを聞いてナターシャさんはタブレットを持ち上げて、スイスイと指でなにかをタップする。

 

「あらぁ。……なるほど……」

「婚約破棄からの家族連座で魔海流し、だっけ? それが原因だろうな」

「そうですね。……でしたら、センタータワーでいぶこーの方々とレッスンをご一緒するといいのではないでしょうか。あの方々も紹介文通り、信じていた誰かに裏切られ、この世界に流れてきたのでアネモネさんの気持ちをよく理解してくれると思いますよ。お話ししてみるだけでも精神的に楽になるのではないでしょうか」

『それはよいお考えです。同じ経験をした方との対話は、精神安定に繋がりやすい。つらい記憶を思い出すことは一時的に不安定になりやすくなるかもしれませんが』

「同じ経験……」

 

 思わずいぶこー所属ライバーたちのプロフィールを見る。

 確かに。

 婚約破棄、からの追放経験者が三人もいる。

 経歴被りすぎでは?

 私、この中に入るのか。

 よ、四人目……。

 

『精神状態の低下が確認されました。別のことを考えましょう、アネモネ』

「べ、べ、別のこと……別のこと……」

「アネモネさん、犬や猫など動物は好きですか?」

「え? は、はい。馬が好きです」

「ああ、騎士さんなのでしたね。……馬はちょっと……」

「えっと……では、犬……」

「犬ですね。では、大型犬カフェでアルバイトをしてみませんか?」

「大型犬カフェ……!?」

 

 なんだ、そのものすごく魅力的な名前のお店は!

 私の食いつきが思いの外よかったせいか、ナターシャさんがタブレットでお店のURLを見せてくれた。

 色々な種類の大型犬が、カフェで働いている。

 お客さんに癒しを与え、店員はお客さんに飲み物や軽食を運ぶ。

 お客さんは大型犬たちへのブラッシングをしたりドッグランでのお散歩、フリスビー、ボール遊び、シャンプーなどの体験もできる。

 おやつは体調管理のために与えることはできないが、戯れることができる時点でなんという天国。

 

「かわいい……」

「アニマルセラピーという精神面を安定させるカウンセリング方法があるのですよ。馬がお好きということは、犬も大きい方がお好きではと思いまして」

「大好きですっ!」

「対人が苦手なのでしたら裏方の仕事もできますし、ここで働きながら心を癒しつつ社会勉強とコミニュケーション能力の勉強もできますから」

「は、働かせてください!」

「わかりました。ではオズワイドくんとアネモネさんは地球の学校と大型犬カフェに通っていただき、ライバー活動もしていただく形でご両親はセンタータウンで資格勉強をしつつ就職して兼業でライバー活動。お間違いはないですか?」

「はい」

 

 家族全員の要望も固まったので、頷く。

 ナターシャさん、仕事のできる人なんだな。

 カッコいい……!

 

「じゃあ、次はライバー活動の方向性ですね。家族でデビューするのは問題はないのですが、ライバーの活動にはなにかしら方向性があります。たとえば歌が好きなら歌中心。ゲーム実況が一般的ですが、そのゲーム実況もゲームジャンルが様々ですからそのあたりも教えていただけるとマネジメントの方向性の参考になります。あとはトーク中心。雑談やラジオふうの配信を中心に活動するとかでしょうか。わたしは雑談と歌中心に活動していますね。どうですか? なにか希望はありますか?」

「お歌! 素敵ね! わたくしはお歌がやってみたいわ。それと最近お料理に凝っておりますの。そういう活動もできますかしら?」

「ええ、お料理系ライバーも最近は多いですね」

 

 母は事前に『お料理やりたいわ~』と言っていたから希望が通りそうでよかった。

 父はゲームとスポーツの同時観戦をしたい、と言っていたがナターシャさんはそれを聞いて「それでしたら実況中心の活動をしてみてはいかがです?」と提案される。

 テレビで放送されるスポーツの実況解説のアナウンサーのような実況。

 かなり希少な能力なので、できる人は非常に重宝されるという。

 父の声は非常に通るので、向いているのではないか、と。



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