原因不明
えーっとどうしようかな。
二人とも口を閉じて、この人は何を言ってんだと表情からわかる。そうよね…たぶん、親しいであろう人の名前を忘れて聞くだなんて。だけど本当にこの人の名前知らないのよ!!
「お嬢様わたしの名前もわからないですか?」
「えーっとごめんなさい、朝から身の回りのことしてくださったのに…」
本当は知っているんだけど、恩を仇で返すようなことしてごめん!一人だけ名前知っててもおかしいし。そうするしかない。
いきなり記憶喪失になったことに不安を感じてかラナが手を掴んで心配そうに見つめる。
でも、それよりも気になるのは若い女性とは思えない見るからに一部、一部が痛々しいほどに赤い手。
なんで?侍女って調理場や水仕事をするような事はあまりないはず。前世の時ネットで調べた情報だからあってるのかわからないけど…。
「ラナさん、お嬢様をすぐに医者に診せよう」
「そうですね。さぁさぁお嬢様屋敷に戻りますよ!」
ラナに半分無理やりに背中を押されながら馬車の方へとUターンする。さっきから掴んでもらっている片手…コレの原因はなにか、調べ上げないと気が済まない。
それが出来るのは少なくともの今日ぐらい。どうにかしないと。
♢
あの後、二人が急におかしくなった私のために色々としてくれた。だけど、当の本人はケロッとなんもないのだ
ベットの横のイスに座って診察をしてくれる医者だろうおばさん。その後ろに見るからに両親だろう見守る中年くらいの男女二人。ラナは両親であろう二人から少し離れたところで何とも言えない様な顔で下を向ている。
本当に今から土下座してでも謝りたい気持ちでいっぱいだけど、記憶喪失という設定を守り抜くには必要なんだ!本当にごめんなさい。
「検査した限り異常がないようですが…記憶がなんらかの原因で失われている様です。私でもこんなケースは初めてで、自然に治るのを待つしかありません」
「お医者様本当にそれしか方法がないのですか?大事な娘です。為す術があるのなら、何があろうと時間と労力をかけます!」
「こればかりはお申し訳ありません」
他にもいろいろ父と医者が互いに言い合うのをただ見ているしかない。この空間で今、下手に言えば何が起こるのか。