転生先は…
どこからか聞こえる鳥の声…もう朝だ。
カーテンの隙間から入ってくる眩しい朝日から逃げるように布団の中に潜る。スマホのアラームがまだなっていないから二度寝をしようと思ったけど、いつもより重たい掛布団に違和感を覚える。何があったのかと怖くなってあんなに眠たかった目も覚める。起き上がると、大きな知らない部屋だった。夢かも…だなんてそんな事を思いながら、豪華で大きいベッドから降りて歩いてみる。
「なんで私こんなところで寝ていたの…?」
取りあえず、ここがどこなのか光の入るカーテンの前に行って開けてみる…っと、待て。両手をよく見ると綺麗にハンドケアされていて肌も白い。寝巻きも白のレースなどが沢山使われたネグリジェと私が着ないような服。慌てて部屋を見渡して鏡を探す。
コンコンコン──。
大変だっていうのに誰?
「はーい!」
「おはようございますお嬢様。今日はお早いお目覚めですね」
「お、おはようございます」
豪邸にありそうな両開きのドアを開けて入って来たのは二十代前半くらいの茶髪の長い前髪の女性。彼女の前には高そうな繊細な模様入りの容器に入れられた水とそれを飲むコップ。それといろんな果物が少しずつお皿に乗っていて下の段にはたぶん、脱いだ服を入れるカゴ。
てか、お嬢様って一人しかいないし私の事なんだろうけど、本当に私ただの一般人よ?まぁいいや、一旦鏡がどこかこの子に聞かないとな…。起きると知らない所だし一体どうなってんの!
「すみません…鏡ってどこでしょうか?」
「お嬢様そんな私に敬語だなんてやめてください!どこか体調でも優れないのですか?あ、その前に鏡でしたね…手鏡が近くにありませんのでこちらへ」
彼女は急いで近寄って来ると片手を優しくとって三面鏡のドレッサーの前まで誘導してくれた。左右にあるさっき開けようとしたカーテンと一緒に窓を開けてくれて部屋が明るくなる。自分の顔を鏡越しで見るとそこにはウェーブがかったベージュぽい長い髪に太い眉、そして長いまつ毛の奥には紫の瞳。
知ってる……知ってる人だ。私が好きな、本のカバーがボロッボロになるまで読んだ小説の…顔が醜いとで有名という設定のアイラ・オープス!!!
バンッと音を立てて机に手をつけ立ち上がる。急いで夢か噓か、と窓から外を見る。
「来ちゃったんだ…」
窓から見える景色は屋敷の廊下を通る人に広い庭園に植えられた植物。そして家の前に停まる馬車。その他、信じられない様々な景色が私にとっては新鮮で仕方なかった。けど、その分ここからどうするか考える。
私が転生してしまったアイラ・オープスは陰湿にいじめてくる悪役令嬢に陰口など精神的にやられているタイプのキャラだったはず…。
小説ではほんの少ししか出ないからわかんないけど見た感じだと少し子供ぽいしまだ二章ぐらいかな?最初出てきた時、隣に居たアイラのメイド名前はラナ…見てると顔色悪そうだし散々な目に遭ってる感が凄い。一体何があるの?アイラは社交界や学校でいじめられているくらいだもの。メイドをいじめるような人でもなさそうなのに…じゃあ、どこかのメイド?
すると犯人はそれなりの地位がある者か、何か言えない事情があるはず。
「お嬢様やはり体調が優れませんか?」
そうだった考えてないで一旦演じなきゃ!
「いいえ、大丈夫よ?心配掛けてごめんなさいラナ」
「それなら良いのですが…」
「すみません。先に髪の毛をセットしたいのでまた座ってくれませんか?」
「えぇ…レディらしく可愛くお願いね!」
鏡の前に座るとアイラの綺麗な長い髪がブラシで梳かれてく。
まじまじと鏡に映る顔を見るが顔のバランスはそこまで酷くないのにブスと言われている…。一体なぜなんだろう?
あ、そういえばアイラって悪役令嬢と同じクラスじゃない!完全に人生終わった…。そういえば二章って学校が始まる章。
なに、高校デビューするしかないの?!しかも、学校となると主人公のヒロインと同級生で、一応いるけど私のこと凄い嫌ってる面食いの婚約者とも同級生って、お先真っ暗じゃない。板挟みにしても程があるでしょ。
「今日のご予定はリストにある直接学校の寮へ持って行く物と足りない物を買いに街へ出かけます」
「わかったわ。ならば動きやすい服をお願い」
淡々と髪が編み込みや捻られた豪華なハーフアップにされていく。が、私の中ではもう明日が学校ということに衝撃が隠せない。
嘘?明日からもう学校?
まだこの世界に慣れてないのに二章、進むの早いよ…。