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花火と流れ星

作者: 小畠愛子
掲載日:2021/12/26

 ひゅるるるるぅぅぅ……どーんっ!


 ひゅるるるるぅぅぅ……どーんっ!


 どんどんどんどんどんどんどんどんっ!




 今日は花火大会です。空いっぱいに咲く光の花が、星たちはもちろん、天の川でさえも隠していきます。




 ひゅるるるるぅぅぅ……どーんっ!


 ひゅるるるるぅぅぅ……どーんっ!


 ひゅるるるるぅぅぅ……わぁっ!


 どんどんどんどんどんどんどんどんっ!




 ……あら? 今なにか聞こえませんでしたか? 気のせいでしょうか、地上で花火を見ている人々も、だれも気にもとめていません。ですが、さっき……。




「うわっ、うわぁぁぁっ!」


 天の川のほとりで、人間たちの様子を見ていた小さな星が、悲鳴をあげて落ちていきます。花火のあまりに大きな音に、びっくりして天の川から落ちてしまったのです。


「そんなぁ、まだ、まだ準備ができてないのに!」


 いつか流れ星になる予定の小さな星は、たくさんの人に見てもらい、たくさんのお願いごとをしてもらうため、天の川のほとりでずっと光をみがいていたのです。それなのに、こんなに早く落ちてしまっては……。


「やっぱり、だれも見てくれないわ。みんな、花火に夢中になって……」


 だれかがお願いごとをすれば、それが小さな星にも伝わるのです。しかし、こんな弱い明かりでは、花火にはとうてい勝ち目がありません。小さな星はしゅんとして、その光もじょじょによわよわしくなっていきます。


「こんなのあんまりだわ。今までずっと、光をみがいてきたのに、このままだれにも知られずに、だれにも見てもらえずに、だれのお願いごともかなえられずに、わたしは消えてしまうのかしら……」




「……はぁ……。花火大会、行きたかったのに」


 花火大会が行われている川から、ずいぶん離れた病院の一室で、男の子がため息をつきました。


「きっとみんな、今ごろ出店でかき氷とか、焼き鳥とか、おいしいものを食べて、花火を見ているんだろうな。……ぼくのことなんて、忘れちゃってるだろうな」


 一学期の途中から、体調を崩して病気になった男の子は、長期の入院をしていたのです。すでに夏休みになっていましたが、お医者様の話では、二学期もどうやら学校には行けなさそうということでした。


「せめて、花火を見れたらいいのに」


 男の子は、うらめしそうに窓の外を見ました。目の前に第二病棟の壁が見えます。この壁にはばまれて。音はするのに花火は見えないのです。男の子はもう一度ため息をついて、それからからだを起こしました。


「もっと窓に近づいたら、少しでも見えるかも」


 点滴の針が外れないように気をつけながら、男の子はベッドから起きあがり、窓に近づきました。さすがに窓を開けたら、看護師さんに怒られるでしょう。でも、ちょっとでもいい、花火が見れたら……。男の子は、窓の上のほうを見あげます。わずかに空が見えましたが、もちろん花火は見えません。


「だめか……。ぼく、このまま病気が治らないで、花火のように消えてしまうのかな」


 と、そのときです。第一病棟と第二病棟のすきまから見える、わずかな空を、きらりとなにかが光って流れていったのです。


「あれは……流れ星だ!」




 小さな星は、もうすでに燃えつきそうになっていました。もちろんだれもお願いごとなんてしてくれません。それどころか、だれにも見てもらえないのでしょう。小さな星のからだは、涙がこぼれるようにぽろぽろと欠けていき、それがさらに光を強めていきます。


「きっとわたし、このまま花火のように消えてしまうのね」


 と、そのときです。欠けていくからだに、強いきらめきを感じたのです。待ちわびていたような、懐かしいような、その感じは……。


「これは……お願いごとだわ!」




 楽しかった夏休みはあっという間に過ぎて、二学期が始まりました。たいていの子供たちは、もっと遊びたかったという残念な気持ちと、また友達と会えるというワクワクとが、半分こになっています。でも、あの男の子は違いました。久しぶりに会った友達たちと、楽しそうにおしゃべりしています。病み上がりながらも、せいいっぱいはしゃぐ男の子は、胸の中でつぶやきました。


 ――願いごとをかなえてくれて、ありがとう――


 すると、不思議なことに、それに答える声が聞こえてきたのです。


 ――こちらこそ、わたしを見つけてくれて、ありがとう――


 胸の奥に、温かなきらめきを感じて、男の子はハッと空を見あげました。太陽にも負けないくらい、強い光が見えたような気がして、男の子はまぶしそうに目を細めるのでした。

お読みくださいましてありがとうございます(^^♪

ご意見、ご感想などお待ちしております(*^_^*)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 巡り合わせというものを感じました。 星は失敗したと思っていましたが、それによって男の子に見て貰うことができ、男の子は花火の代わりに願いをかなえてくれる流れ星を見ることができたからです。 塞…
2024/08/17 16:41 退会済み
管理
[良い点] 願いを叶えるほうも幸せになれるんですね。 面白かったです。
[良い点] 男の子、治って良かったです(> <。);*、 願い事を叶えた流れ星ちゃんにとっても、男の子を救えたことが救いになったのでしょうね★.:*:・'°☆ (祝)退院おめでとう……❕
感想一覧
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