花火と流れ星
ひゅるるるるぅぅぅ……どーんっ!
ひゅるるるるぅぅぅ……どーんっ!
どんどんどんどんどんどんどんどんっ!
今日は花火大会です。空いっぱいに咲く光の花が、星たちはもちろん、天の川でさえも隠していきます。
ひゅるるるるぅぅぅ……どーんっ!
ひゅるるるるぅぅぅ……どーんっ!
ひゅるるるるぅぅぅ……わぁっ!
どんどんどんどんどんどんどんどんっ!
……あら? 今なにか聞こえませんでしたか? 気のせいでしょうか、地上で花火を見ている人々も、だれも気にもとめていません。ですが、さっき……。
「うわっ、うわぁぁぁっ!」
天の川のほとりで、人間たちの様子を見ていた小さな星が、悲鳴をあげて落ちていきます。花火のあまりに大きな音に、びっくりして天の川から落ちてしまったのです。
「そんなぁ、まだ、まだ準備ができてないのに!」
いつか流れ星になる予定の小さな星は、たくさんの人に見てもらい、たくさんのお願いごとをしてもらうため、天の川のほとりでずっと光をみがいていたのです。それなのに、こんなに早く落ちてしまっては……。
「やっぱり、だれも見てくれないわ。みんな、花火に夢中になって……」
だれかがお願いごとをすれば、それが小さな星にも伝わるのです。しかし、こんな弱い明かりでは、花火にはとうてい勝ち目がありません。小さな星はしゅんとして、その光もじょじょによわよわしくなっていきます。
「こんなのあんまりだわ。今までずっと、光をみがいてきたのに、このままだれにも知られずに、だれにも見てもらえずに、だれのお願いごともかなえられずに、わたしは消えてしまうのかしら……」
「……はぁ……。花火大会、行きたかったのに」
花火大会が行われている川から、ずいぶん離れた病院の一室で、男の子がため息をつきました。
「きっとみんな、今ごろ出店でかき氷とか、焼き鳥とか、おいしいものを食べて、花火を見ているんだろうな。……ぼくのことなんて、忘れちゃってるだろうな」
一学期の途中から、体調を崩して病気になった男の子は、長期の入院をしていたのです。すでに夏休みになっていましたが、お医者様の話では、二学期もどうやら学校には行けなさそうということでした。
「せめて、花火を見れたらいいのに」
男の子は、うらめしそうに窓の外を見ました。目の前に第二病棟の壁が見えます。この壁にはばまれて。音はするのに花火は見えないのです。男の子はもう一度ため息をついて、それからからだを起こしました。
「もっと窓に近づいたら、少しでも見えるかも」
点滴の針が外れないように気をつけながら、男の子はベッドから起きあがり、窓に近づきました。さすがに窓を開けたら、看護師さんに怒られるでしょう。でも、ちょっとでもいい、花火が見れたら……。男の子は、窓の上のほうを見あげます。わずかに空が見えましたが、もちろん花火は見えません。
「だめか……。ぼく、このまま病気が治らないで、花火のように消えてしまうのかな」
と、そのときです。第一病棟と第二病棟のすきまから見える、わずかな空を、きらりとなにかが光って流れていったのです。
「あれは……流れ星だ!」
小さな星は、もうすでに燃えつきそうになっていました。もちろんだれもお願いごとなんてしてくれません。それどころか、だれにも見てもらえないのでしょう。小さな星のからだは、涙がこぼれるようにぽろぽろと欠けていき、それがさらに光を強めていきます。
「きっとわたし、このまま花火のように消えてしまうのね」
と、そのときです。欠けていくからだに、強いきらめきを感じたのです。待ちわびていたような、懐かしいような、その感じは……。
「これは……お願いごとだわ!」
楽しかった夏休みはあっという間に過ぎて、二学期が始まりました。たいていの子供たちは、もっと遊びたかったという残念な気持ちと、また友達と会えるというワクワクとが、半分こになっています。でも、あの男の子は違いました。久しぶりに会った友達たちと、楽しそうにおしゃべりしています。病み上がりながらも、せいいっぱいはしゃぐ男の子は、胸の中でつぶやきました。
――願いごとをかなえてくれて、ありがとう――
すると、不思議なことに、それに答える声が聞こえてきたのです。
――こちらこそ、わたしを見つけてくれて、ありがとう――
胸の奥に、温かなきらめきを感じて、男の子はハッと空を見あげました。太陽にも負けないくらい、強い光が見えたような気がして、男の子はまぶしそうに目を細めるのでした。
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