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13 殲滅

 迫る2個小隊の先頭機へとライフルの砲口を向ける私の隣でサブリナちゃんの雷電も銃を構える。


「ほら、しっかり狙えよ」

「うん? ……ああ、ありがと!」


 サブリナちゃんの機体から送られてきたデータによると、彼女のライフルはまだ敵を有効射程内に捉えていない事が分かる。


 私たちも敵部隊もほぼ高低差の無い平地にいる。

 そして敵部隊の雷電が装備しているライフルもサブリナちゃんの機体が装備している物と同型の物。


 サブリナちゃんのライフルが敵を有効射程内に捉えていないという事は即ち、敵もこちらを有効射程内に入れていないという事を意味する。


 最大射程にはとっくに入っているようだが、ロクな命中弾を期待できるようなものでない事はここまでの逃走劇で把握済み。

 つまりはここで足を止めて狙撃をしても危険は少ないという事だろう。


 サブリナちゃんは言外にその事を教えてくれているのだ。


(なるほど、これがオススメランキング9位の「面倒見の良さ」というやつか……)


 私はこみ上げてくる笑みで手が震えるのを抑えながらこちらへ向かってくる敵の1機に照準を合わせるが、どうしても口角が緩んでしまうのだけは抑えられなかった。


 深呼吸を1つしてコントロールレバーのトリガーを引く。


≪雷電を撃破しました。TecPt:10を取得、SkillPt:1を取得≫


 放たれた砲弾は一瞬でホバー状態の敵機へと吸い込まれていき、全備重量で数十トンはあろう雷電はただの一撃で後ろへ倒れるようにしながら爆発四散。


 その爆発と周囲へ撒き散らされる破片を避けようと編隊を崩した敵小隊はそのまま左右に機体を振りながら回避運動を始める。


 後方の1個小隊も先行する小隊にならって回避運動を始めるが、驚くべきことにサブリナちゃんから渡されたライフルは敵の回避運動をものともしない照準性能を持っていた。


 ニムロッドの性能ではない。

 ニムロッドの頭部は被弾によって機能していない。

 だというのに各種情報を処理して補正をかける頭部メインプロセッサが無いも同然の状態であるのに、ライフルの照準は面白いくらいにスルリ、スルリと敵の動きに追従してくれるのだ。


≪雷電を撃破しました。TecPt:10を取得、SkillPt:1を取得≫


 左右へと進行方向が切り替わる際の減速を狙った射撃がさらに1機の雷電を撃破する。


「なるほどねぇ……。ねえ、マモル君、このライフルってランクはどれくらいの物なのかしら?」

「さあ? いえ、すいません。型番の表示がバグってるのでサッパリです。少なくともランク3以下って事はないと思いますが……」

「私もそう思うわ」


≪雷電を撃破しました。TecPt:10を取得、SkillPt:1を取得≫


 3機目を撃破。


 無論、このライフルにも欠点が無いわけではない。

 このライフルの種別はアサルトライフルとなっているように連射機構もあるのだが、反動が強くて1発撃つごとに盛大に銃口が跳ねあがってとても連射を試そうだなんて思えない。

 私もサブリナちゃんがそうしていたように単射で使用していた。


 このライフルの反動を抑え込むにはニムロッドよりもさらに高ランクのハイパワーで、かつ高レベルの火器管制システムを有している機体でなければならない。

 そうでなければこのライフルの真価を発揮する事はできないのだ。


 マモル君はこのライフルをランク3以下ではないだろうと予想しているようだが、少なくともランク4でもないだろう。


 私が知っているランク3の武装といえばアサルトカービンにビームソードと拳銃。

 兵装の種別こそ違うものの、私にはどうしてもこのライフルが私が知っているランク3の武器よりも1ランクだけ上等の物には思えなかったのだ。


≪雷電を撃破しました。TecPt:10を取得、SkillPt:1を取得≫

≪雷電を撃破しました。TecPt:10を取得、SkillPt:1を取得≫


 4機目。

 5機目。


 ライフルの弾速は凄まじく、排莢口から飛び出した空薬莢が弧を描いて、やがて重力に負けて落下軌道を取り始める前にはもう4kmほどの距離にいる敵の撃破判定が出ているくらい。


「これが高ランクの武装なのね……。ランク3の機体と武装でイキって勇んでいた自分が馬鹿みたい」


 心の奥で熾火のように熱を持ったままだった闘志が再び点火して炎となっていくのを感じる。


 目の前の雷電たちに対してではない。


 いつか。

 いつか再びホワイトナイト・ノーブルが私の前に敵として姿を現した時、今度こそ雪辱を晴らしてみせると誓ったものの、さて実際にどうやるのかについてサッパリだったのだ。


 一発、拳銃を撃ち込めば雪辱を晴らした事になるのか?

 一太刀、ビームソードで斬りつけてやれば私の気は晴れるのか?

 んなこたぁない。


 ここはやはりノーブル相手に撃破判定を取らなければリヴェンジを果たしたとは言えないだろう。


 サブリナちゃんのライフルと同じ物か、さらに上位の物を手に入れればそれもやれない事ではないのではないだろうか?

 いや、驚異的な性能を誇るホワイトナイト・ノーブルを相手にするならば、それが最低条件と言っても過言ではないだろう。


≪雷電を撃破しました。TecPt:10を取得、SkillPt:1を取得≫

 6機目。

≪雷電を撃破しました。TecPt:10を取得、SkillPt:1を取得≫

 7機目。

≪雷電を撃破しました。TecPt:10を取得、SkillPt:1を取得≫

 8機目。


 気が付いた時にはライフルの照準器は新たな目標を探し出す事ができないようになっていた。

 私は慌ててライフルを左右に振って敵を探すが赤茶けた大地に散らばる残骸と燃え盛る炎と黒炎以外のものを見つける事ができない。


「おいおい! もういないよ!」

「あ……、ああ、もう全滅したのね」


 私の焦りはニムロッドの動きにも出ていたのだろうか。

 笑うのを堪えながらサブリナちゃんが敵機がいなくなった事を告げる。


「やるじゃん? 百発百中、おまけに1ショット1キルだ!」

「いえ、借りたライフルの性能のおかげよ」


 黒い粘性の煙と土煙を風が洗い流していく。

 それと同時に私の中の闘志が急に熱を失っていくのを感じていた。


 闘志は消えて無くなったわけではない。

 今はただ休んでいるだけ。

 仇敵と相まみえた時は躊躇なく食らいついていけるように牙を研いでいるだけなのだ。


「それより、そっちのレーダーに他の敵の反応はあるかしら? 私のニムロッドは完全にレーダーは停止しているの」

「いや、レーダーも光学カメラも音響センサーも反応は無しだ」

「そういうものなのかしらね?」


 まあ今から敵部隊が再び攻撃のために部隊を分けてきたとしても私たちがミッション領域から抜けるのが先だろう。

 1つだけ気になっていたのは敵3個小隊の内、1個小隊は丘の上で倒してきたわけで、しかも向こうもサブリナちゃんのライフルの威力は知っているわけだから1個中隊では戦力不足と判断して増援を送ってくる可能性を危惧していたのだけれどその心配は杞憂だったようだ。


「それじゃミッション領域を抜けて回収を頼みましょう」

「了解。……いや、通信だ」

「うん? あ、こっちにも」


 通信の相手は中立都市(サンセット)渉外部。今回のミッションの依頼主である。


 通信をONにすると見るからに上機嫌の中年女性の姿がバストアップで映し出された。

 長い髪は仕事の邪魔とばかりにショートカットの目付きが鋭いキャリアウーマン風の女性が顔を綻ばせて満足気な表情を浮かべている。


「お疲れ様です。傭兵(ジャッカル)さん」

「あ、どうも。すぐにミッション領域の外に出ますんで回収の手筈をお願いします」

「その必要はありません」

「え……?」

「現在地に回収機を向かわせますので、その場で待機してください」


 うん? どういう事だろうか?

 そこまで行けば回収してもらえるというラインとしてミッション領域が設定されていたのではないのか?


 だったらなんでミッション領域なんてものを設定したのだ?

 第一、ゲーム的にはこの場はまだ他勢力の部隊が越境してきている危険地帯なのではないのか?

 なんでそんな危険地帯に撃墜される危険を冒してまで輸送機を送ってよこすのだ?


 続く中年女性の言葉で私の疑問は晴らされる事となったが、そこで新たな疑問が生じる。


「中立都市の管理領域へ侵入してきたトヨトミ側部隊の殲滅を確認しました」

「……え?」

「越境部隊の殲滅により、現状、当該地域には危険は無いものと判断します。それにしても見事な腕前ですね。貴方がたの見事な働きに対して私も上司を説得して特別ボーナスを出させる事を約束しましょう!」


 いやいやいやいや!

 私たちの攻撃に振り向けられた1個中隊は確かに殲滅したのは確かだけどさ、市役所の職員であるこの女性の口ぶりではまるで、まるで……。


 越境してきた雷電部隊216機全てを撃破したみたいな言いようではないか!?


君たちはオムツァーって知ってるかい?


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