98話 夜が明けて②
自然とたどり着いた、夕暮れの酒場。
元々待ち合わせの予定はあったが、無意識に到着してた事に驚いた。昔は憧れだった場所も、今や日常なのだな、と。
その後どうなったのか、とニュース誌を取り席につく。
大見出しには「眷属討伐」、今日だけで2体が討伐されたらしい。
その片方は見覚えのある奴だった。「関門の獅子」と「飛蛇」と、それぞれの討伐者の挿絵。
討伐者の方もまた、片方には見覚えがあった。
「お、英雄様がこの俺のニュースを見てくれてるじゃねぇか。」
なんて頭の中で噂をすれば、本人がご登場だ。
「確か薬屋前のあの時の……。」
「そこにも書いちゃあるが、改めて。俺は『爆槍』の名で通してるモンだ。
あんたの通り名は載ってなかったが、『英雄様』とでも呼べばいいか?」
「僕は──」
ここで名乗るべき「名」は、既に決めていた。
「──『護剣』、で通そうと思う。
ていうか『英雄』だなんて大げさな……。」
「そーか昨日の分、見てないのか。俺は読み終わったやつだから、やるよ。」
そう言い手渡される、昨日のニュース誌。その端には、功労者としての自分達の挿絵があった。
「こ、これって…えっと……。」
「いいねいいねぇ、その『慣れてねぇ』って反応。
昨日の酒場を見れなかったのが惜しかったというか、なんというか。」
「でも記事で比べると、爆槍さんたちのほうがかなり……。」
並べて見ると、明らかに「眷属討伐」の方が目立つように作られている。
「あー、そこはあれだ。
上の奴ら的には金板級の誰かに討伐させて、名声の後押しにしたかったらしくてな。『銀板上がりたてごとき』に解決されたのが気に食わねぇらしい。」
「なるほど、そういう。」
自分でも思う所はあるくらいだし、気持ちは分からんでもない。
それに、金板級の信頼度を稼いでおいた方が、なにかと都合がいいのだろう。
「それにしても『関門の獅子』を仕留めるなんて。一度戦った事あるけど、全然攻撃を通せなくって。」
「まーな。俺らも一度取り逃した事あるけど、力の大本がいなくなって弱体化してたしな。
タフささえ無くなれば、俺らとの相性はいいからな。奴がテリトリー広げる前に一気に詰め寄っちまえば、ただのデカい的よ。
多少なら熱い中突っ切るのも、慣れてるからな。」
武勇話を本人から直接聞く、この状況に懐かしさ。
村に居た頃は毎日のように、泊まりの冒険者に聞いて回ったりしてたっけ。
「それで、お前の方はどうだったんだ?」
「どう、って?」
「決まってんだろ、そっちの戦いのことだよ。
魔力異常の元凶ってどんな奴だったんだ? 倒したんじゃなく鎮めたっての、本当なのか?」
…そうか。今は僕も「語る側」なのか。
ちょっとしみじみとしつつ、改めてあの冒険を思い返し始める。
「そうだな、順を追うと、まず角塔に到着した時にだな──」




