表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/228

9話 繁華の街レミレニア④

 その後は、少し奥まった店を回っていった。


 観光向けの大通りにもまだ気になる店はあるが、それは後回し。

 少し奥まった路地の、武具や薬といった冒険者用の用品店の並び。

 これから暫くお世話になるであろう場所だ。


 全部回りたいのをこらえつつ、とりあえずは目に留まった最低限。

 武器屋や防具屋は後回し。とりあえずの物は手持ちで足りている。

 けどメンテナンス用品は多少余分に持っててもいいなと思い、それぞれ1件ずつだけ買い物を済ます。


 奥に行くほど増える薬屋は、とりあえず安いのを1本ずつ。効力を試す用だ。

 自分は魔法は得意な方ではなく、頼るとすぐ魔力切れになってしまう。魔力のポーションには頼る事も多いだろう。

 …とはいえ液体、荷が一気に重くなってくる。3件回ったところで、残りは今度にしよう。



 …今の所、ラディの眼差しに眼だった変化なし。興味を惹かれるものは無かった様子。 でもダメ元でもとにかく回ってみよう、と思いそのまま店回りを続ける。



 そして最後に向かう魔法用具屋。

 長杖や短杖、儀式用のダガーといった魔術の補助品が目を引くが、本命は別の棚。

 呪符や腕輪といった、魔法道具たち。


 魔法力が低い冒険者が補助で使うための品々。

 旅立つ前はお古の剣は安く譲ってもらえたが、値の張る魔法道具は見せてもらった事があるだけ。

 実際に使われる所は見た事すらない、憧れだった物。

 そして自分も、ゆくゆくお世話になるであろう。


 ここまではぐっとこらえてたが、少しくらいは……。

 …いや、だめだとぐっと棚の品に伸ばしたい手をこらえる。

 実際に有効な物が分からないまま買いあさるのは無駄遣い、そう自分に言い聞かせる。


 少しでも気の紛らわしにと、ラディの様子をうかがう。

 …意外だった。さっきまでと違う、好奇の目。

 奥まった所の実用品ではなく、目立つ所に置かれた装飾品に対しての。


 そのまましばらく観察してると、気付いたラディの方から。

「これは、いったい…?」

 そう言い指さした品は、灯す火が奇妙な模様を(えが)く蝋燭。うろ覚えを辿りながら、言葉を返す。

「飾り火の蝋燭か。火を灯すとこうして決まった模様を取る、飾りの一種。

 この模様は、確かどこかの厄除けだったかな?」

「かざり? これを、みにつけるのです?」

「いや、これは置き飾りだな。具体的には玄関脇に置いて、悪い事が入ってきませんようにって祈るんだ。」

「げんかん……。」

 少し考える様子、そしてラディが言葉を続ける。

「これって、本当にきくのです?」

「どうだろうね。ただ、信じる事が大事なんじゃないかな。

 これで不安はなくなる、安心だ、って。」

「…よくわからないです。」

 そうは言いながらも、時々揺らいで崩れてはまた元の模様に戻る火を、ずっと見つめている。

「気に入った?」

「たぶん、はい。

 …これが、『ほしい』ということでしょうか?」

「そしたら、買うんだ。

 1本だけなら安いし、さっき薬草売ったお金で足りるんじゃないか?」

 ラディが服から小さな布袋を取り出し、中を見る。音からして、硬貨だろう。

「これで、たりるでしょうか?」

 渡された袋の中には銀貨が3枚。銀4枚の蝋燭には、少し足りなかった。

 でも、まぁいいか、と。これくらいの差額なら、別に自分が出してしまっても。こっそりと自分の財布から、不足分を滑り込ませる。

「大丈夫、これで買っておいで。」

 それを聞いてラディの表情が一気に明るくなり、会計に向かっていく。

 ラディがカウンターに着いてから不安がよぎったが、問題が起こるまでは見守る事にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ