64話 再起動③
「セ…セイルさぁん……。」
宿に戻るなり、いきなりラディが泣きついてきた。
「ど、どうしたんだよ。」
「いえ、ただ、とてもこころぼそくて……。」
ラディが落ち着くまで待ってから、話を切り出す。
「…何かあったのか?」
「い、いえ、その……。」
「言い辛い事、なのか?」
続きの言葉を考える間に、ラディから返答。
「…帰るとちゅうで、魔物をみかけたのです。」
「それで、大丈夫だったのか?」
「はい。…ほかの冒険者さんが、たいおうしてくれました。
それをただ見てるだけで、こわくて何もできなくて……。」
最も恐れてた形の出来事であった。
偶然に偶然が重なり、ラディへの精神的ダメージが最も大きいであろう形。
だからこそ決めていた。もしそうなってたら、かける言葉を。
「大丈夫だ。
僕がラディを守ってみせる。」
「セイル…さん…?」
「ラディをもう傷つけさえやしない。
どれだけの人がラディを敵と思っても、僕はラディの味方でいてやる。
戦いの時も、僕が前に立って守ってやる。」
どこまで実現できるか分からない。けど、何があってもラディの味方でいる事くらいはできる。
「でも、どうやって?」
「特訓通り隣で戦ってもいいし、僕の後ろででもいい。
作戦とか練り直しになるけど、本来の術士としての立ち回りなら、より安全だ。
…ただ、術士としての偽装もできるようにならないとだから、険しい道かもね。」
「なる…ほど。」
それで解決できる自信は無い。けど、それが今できる精一杯の宣言。
「ラディが好きな道を選んでくれ。
どっちを選んだとしても、僕がなんとかする。」
「でも、セイルさんにはめーわくじゃ…?」
「…じゃあ言い方を変えよう。
誰かが自業自得で破滅するならともかく、周りのせいで破滅するのを『英雄』は見過ごさない。
だから僕にラディを救わせろ。それが英雄譚の第一歩だ。」
本当にそうなるといいな、と思いつつの言葉。
だが今はそこは重要ではない。英雄らしく振る舞う事での安心感、そして実行する事。それこそが英雄のあり方だというのが持論だ。
「わかり、ました。
セイルさんを、信じてみたいです。」
いまいち頼り切られない自分の実力不足が、恨めしい。
「明日から行けそうか?」
「はい。
…ふあんはありますが、がんばってみます。」




