62話 再起動①
「…一先ず、事情は分かった。」
翌日の酒場。とりあえずエンには一通りの事を伝えたところだ。
「その…ごめんなさい。」
「私も思慮が足りてなかった。
それで、今日の続行は厳しそう?」
「はい。…ごめんなさい。」
昨日よりは多少良くはなったが、言葉の抑揚はやはり少ない。
「いえ、そんな事も見越せなかった私もどうかしてたし、そこはお互い様。
とりあえず考えるべきは、銀板級試験を続行するかどうかね。」
確かに試験を中断するなら、一旦問題は解決するだろう。
だがラディが冒険者としてやっていくなら、いずれは直面する問題。これを機に解決してしまいたい。
昨日一晩考えたが、手早い綺麗な解決案は出てこなかった。
部位が弾け飛ばされる大技はもちろん、爪や牙の裂傷なんかも受けたらバレてアウトだ。
修練所でのラディの成果を見る限り、そんな無傷の立ち回りを要求するのは無謀だ。自分ならまだしも、ラディは近接戦闘は完全に素人。それとなく形にはなってきているが、対魔物に関しては未経験。
無難を取るならば一先ず試験は中断、旧来のランクの依頼を回して改めて経験の積みなおしからだ。すぐに解決できる方法ではない。
ならばいっそハルドレーンさんに事を伝える? 無いとは思うが万が一のリスクを抱えながら?
もしもハルドレーンさんが排除しようと動けば、この街にはいられなくなるだろう。金板級の影響力というのは、そういうものだ。
鎌をかけしたりでそれとなく安全を取ろうにも、そういうタイプの話術は苦手だ……。
…どうせならだ。
一旦休みを挟むなら、自分も思いっきりリフレッシュしてこよう。
思考が凝り固まって狭くなってしまってるのもきっとあるだろう。
それで思い浮かばなかったら、時間をかけてでも安全な選択をしよう。
「僕の方で対策を考えておく。その上で、明後日結論を出したい。」
「分かった。休止の事は私から伝えておくから、しっかり休ませてあげてね。」
エンならうまく誤魔化してハルドレーンさんに伝えてくれるだろう。
タイムリミットは定まった。それまでに何か……。




