55話 幕間:四種族と魔物
「……魔物って、なんなのでしょうか?」
静寂だった時間の中、ラディがぼつりと言葉を漏らす。
「ん、『主に野に棲む強大な生物』とか、そういうのではなく?」
「はい。
いろいろ考えたのですが、そういえば何を『魔物』とよぶのか、分からなくなって。」
「『人族および竜以外の生物』がそれになる…が、人族の同時に必要になるな。」
「おねがいします。」
「人族は『四種族』とも言われ、その名の通り4種の人族をまとめて言う総称だな。
まずは『徒人』。僕や、ラディの普段の姿はそれだ。
傾向として魔力を筋力補助として使うのは得意だから、その手のスペシャリストは重量級の斧ですら軽々と扱えるほど。
反面、持ち前の魔力や魔法技術は凡程度、だから杖やローブといった補助道具を使うの人が多いな。」
「セイルさんみたいに、ですか?」
「…説明進めんぞ。」
「次に『森人』、ハルドレーンさんがそうだな。
傾向としては剣術や魔術の技能に長け、大がかりな術は不得手だが、代わりに技巧に長ける。
町によっては貴族の人が多いとは聞いたけど、レミレニアに貴族制は無いみたいだね。」
「きぞくせい?」
「偉い人とそうでない人を分ける仕組みだよ。
今は廃止されてる所がほとんどだけど、残ってる所もまだあるらしい。」
「そして『猫人』、エンがこれにあたる。
前にも聞いてた話だけど、大がかりな魔術が得意。あとは小柄なのを活かしたタイプの剣術を使う人もいるとか。
ただ、人族に加えられる時に大変だったらしい。」
「むかしは違ったのです?」
「あぁ。約4300年前までは、友好的な魔物の括りだった。
けど法を再整備する時に、種の数の多さや徒人・エルフとの交流が多かった事もあって、そこで正式に人とされた訳だ。」
「…なんか、みがってですね。」
「そういうもんだよ、歴史なんて。」
「最後に『竜人』。ラディの知り合いには、まだいないかな。
酒場では何人か見かけたな。割合としてはかなり少ない人たちだ。
筋力が高く扱える魔力も大きい、と見た目通り竜のごとき人たちだ。」
「ばんのう、というやつです?」
「あぁ。ただそれだけに、当時あらぬ噂も立ったらしい。生体禁術説とか、サタンの手先の成れ果て説とか。
実際は竜の特異性から発生した種で、そんな噂はすぐ立ち消えたんだとか。」
「じゃあ、人というよりほとんど竜なのです?」
「そうなるな。
当時竜との条約を結んだ時の流れの、特殊な例だ。」
「とまぁその4種族を『人族』とし、それ以外の生物は魔物、という形だ。
ただこれはこの国単位での話、町や国によっては違ったりするから、そこは要注意だな。」
「…なるほどです。」
「ところでラディは『生物』にはいるのでしょうか?」
「……さぁ?」




