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真水のスライム  作者: ふぃる


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54/228

54話 日常の中に④

 夜。宿に戻っても、ラディは姿を崩さずにいた。

 よほど野次馬の視線が印象に焼き付いてしまったのだろう。

 窓から外を眺めるラディの表情からは、やはり何を思っているか読み取り辛い。


「…セイルさん。」

 静寂を破り、ラディが話を切り出す。

「どうした?」

「セイルさんは、魔物はこわいですか?」

「いや…そうでもないな。

 もちろん怖いと思う魔物もいるけど、魔物全部がそうとは思わない。」

「でも、ほとんどの人はそうではない、のですよね?」

「だろうね。『魔物は危険な存在』、という認識の上に。」

「なぜ、きけんかどうか分からないのに、きめつけるのでしょうか?」

 一息の間を開け、自分なりに答える。

「これは僕の考え方なんだけど、怖いものの大体は『未知への恐怖』だと思うんだよ。」

「みち?」

「『よく分からないものは怖い』って事。

 何を考えてるか分からないから怖い、何をするか分からないから怖い。

 その延長線上に、危険かもしれないから、襲ってくるかもしれないから怖い。

 …だから魔物に触れる事の無い人たちは、全ての魔物は脅威である、そう感じるんだろうなって。」

「……なるほど?」

「『冒険者』だって昔の名残りでそう呼ばれてるだけで、その実態は魔物…未知の脅威から、見知った街を守る組織でしかないし。」

 ラディの長い思考時間。つい思ってる事そのまま並べてしまったが、理解できたのだろうか?

「でも、セイルさんはそうではなかった、と。」

「まぁ、ね。元々家の関係で、魔物使いの人を見かける事も多かったし。

 脅威としての面も、そうでない面も、両方触れてきたから、『魔物は怖いもの』とは思わない。

 …それはそれとして怖い魔物もいるけどね。」

 再びの長い思考。

 流石にもっと要約すべきだったな、と反省し付け足す。

「要するに、僕は『いい魔物もいる』って知ってるから、全部の魔物が怖いとは思わない。って事だ。」


「じゃあ、せかいじゅうが『ラディ』の事を知れば、魔物とばれても大丈夫です?」

「…解決の助けには、なるだろうね。」

 かなり困難な道にはなるだろうけど、全くあり得ない話ではない。

 竜だって昔は魔物とされて敵対関係だったが、今や共存関係として名立たる竜も少なくない。

「…決めました。

 セイルさんと一緒に冒険をして、一緒に名をあげる。それで、ラディの事をせかいに知ってもらう。

 それが、冒険のもくひょうです。」


 …いつの間にか、話が大分大きくなってしまった。

 実力不足を目の当たりにした今、約束の返事をする事はできなかった。

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