51話 日常の中に①
「だいじょうぶ、ですか?」
昼前の街角、屋台群の中の角の席。
今日も「軽く運動」し、少しインターバル。
完全に慢心だった。
慣れたと思っていた魔力疲労は、ただギリギリのラインにいただけだった。
バランスの影に隠れてた蓄積が、午前特訓による傾きで一気になだれ込んできた。
3日目でこんな状態だ。正直、好転する予感が全くしない。
それでも停滞するよりはマシだから頑張るしかない、が──
「ぎりぎりまで、休ませて……。」
「…了解です。」
活動の濃度から長く感じていたが、冒険者になってまだ1ヶ月も経たないのか。
村での事が、既に懐かしく思えてくる。
360度森に囲まれ舗装道すら無かった所に居た奴が、今や大通りを眺めつつ優雅に焼き菓子を賞味ときた。
…いいのかなぁ、という気持ちがとめどなく湧いてくる。
確かに銅板級としては、稼ぎは高い方だとは思う。
しかしパーティ仲間が片や場慣れも土地勘も利く熟練者。彼女のおかげで、本来探索にかけるはずだった時間を大幅に削れている。戦力としても大いに体験済みだ。
片や発展途上で限界知らず。しかも「ついで」と称してハルドレーンさんとの特訓までこなし始め。
確かにエンが言ってた通り、パーティとしての相性はいいのかもしれない。けどそもそもの基礎の能力が違いすぎる。
自分のスタミナの無さ、戦況に対する柔軟性の無さ、行き詰るのは時間の問題だろう。
まぁ、例え分不相応だとしても実際稼げてはいる訳だし、当面は大丈夫だろう。どうにか喰らい付く程度には自分も動けているし。
エンは「いざという時」の立ち回りも慣れてるだろうから、特に問題はない。
だけどラディは? 依存させてしまってるのではないか?
元々稼ぎを立てるくらいではあったし、世間を知り関心を持った今、ラディ一人でもなんとかできるだろう。
だけど、もしもパーティが解散となった時、ラディはそれでも自分に付いてくるだろう。同時に見限るような薄情な奴と思えたら、どれだけ気が楽だっただろうか。
…やめだやめだ、こんな憶測まみれ、考えても仕方ない。
疲れてるからそんな思考になるんだ。できるだけ休憩するんだ、変な事考える時間が勿体ない。
焼き菓子の甘味と練り込まれた果物の酸味が染み渡る。
昼飯前の賑わい、歓声、燻製の煙のにおい……。
…歓声? 催し物でもやってるのか?
違う、明らかな破壊音も混じってる。
やや遠方に妙な人だかり、見世物の見物にしては様子が変だ。
煙も上がってる。対応に当たる人もいない。
思考が纏まる前に、剣を取り駆け出していた。




