34話 討伐依頼④
「ごめんなさい、てまどりすぎました。」
地に伏す銀鞭の骸、その首に深々と刺さっている短剣。昨日ラディが買ったやつだ。
どうやって、と思ったがラディを見て納得した。
「…ボウガンか。」
確か弓の教本に、ボウガンの挿絵も何点かあった。それを模したラディの右腕が、短剣を矢として撃ったのだろう。
とか余計な事を考えてる内に、ラディが放つ2発目。小石だろうか、第二のこめかみに命中
剣に絡まった鞭がゆるむ、瞬で絡みをほどく。そのまま踏み込み、よろけた首へと刺突。阻むものもなく、そのまま引き裂く。
フリーになった所で最初に来た奴を…と思ったが、牽制の炎柱の向こうには既に姿は無く。
他にも離れていく物音がいくつか。一応しばらく警戒し続けるが、動く気配はもう無かった。
「…逃げられたわね。」
暫しの様子見ののち、エンが警戒を緩める。
「どうする? 追うか?」
「…いいえ、やめておきましょ。リスクが大きすぎる。
それに、そろそろしんどくなってきてるんじゃない?」
気が緩み、感じ始める疲労感。だが、これくらいなら大したものではない。
「…いや、まだ行ける。」
「今、ちょっと迷ったでしょ。そう曖昧な状態なら、やめといた方がいいわ。
そういうのが事故の元って事は多いし。」
否定できない話。が、もどかしさもある。取り逃しのもやもやした気持ちと共に、エンのプランに乗る事にした。
「しかし、こういう場合ってどう計測されるんだ?」
帰路の途中で、ふと思い出す。すぐに必要な情報ではないし、と流し読みにしていた部分。
「報酬金の事?」
「あぁ。」
「ちゃんとリスト見てなかったの?」
「さっと通して程度で細部までは……。」
ため息ひとつの間を開け、エンが続ける。
「…まぁ、別にいいけど。
とりあえず簡易リストに報酬額が載ってたでしょ。あれが1体あたりの報酬額。」
「1体あたり……。」
リストの金額を記憶から辿る。確か以前までの依頼の通常報酬より多くて、それが2体分……。
「……やけに多くない?」
「そんくらい無いと誰もやりたがらないのよ、集団戦は。
危険だし対策にも手間がかかる、できればやりたくない相手。
だから強さの割に報酬は割高、しかも全討伐に成功したら追加報酬付き。それでやっと消化されるようになったんだって。」
「…なるほどな。」
逃げられなければおそらく全討伐まで行けてた…いや、そういうのも込みでの高報酬なのだろう。
仕方なしの撤退とはいえ、どうしても惜しいと思う気持ちに引っ張られてしまう。




