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2話 奇妙な「それ」①

 木漏れ日がちらつき、葉と水が奏でる涼しい森。

 「美しい」という言葉以外の語彙を奪う程ではあるのだが、生憎ここはまだ街から外れた要警戒地帯。

 道を断ち切るように細長く広がるこの森は、特に荷の多い行商人には不満の対象となっている。


 でもそんな事は自分には関係なし。最低限の荷物なら、大した障害ではない。寧ろ、ずっと平地続きだった旅路から一変した景色、あまり来なかった「遠くに来た」という実感。

 故郷のレグ村の近くでは見られず、本や話で聞いただけだったこの環境に、まだ現実感が中々やってこない。

 森を抜ければ、目的地の街・レミレニアはもう目の前。冒険生活への境界線、だなんて浮かれた事を考え始めた所で、自らの頬をはたいて気を落ち着かせる。



 のどかな雰囲気ではあるが、魔物が出没する区域。

 村を通りすがった冒険者曰く、生息魔物の殆どは小型で危険度は低いが、なにぶん見通しの悪さもあって未知な箇所も点在してるんだとか。

 話で聞く頻度こそ少なかれど、大きな爪跡や木がなぎ倒される音、果てには遠くに葉の屋根を貫く巨大な影を見たとか。流石に誇張表現もあるとは思うが、用心するに越した事はない。

 とはいえ、見える範囲・聞こえる音に、そんな危険は見受けられない。気を張り過ぎるのも疲労からの危機に繋がりかねないしと、一応程度に怪しい気配に気を配りつつ、安らぎの空間に浸る事にした。


 陽が葉に遮られ、程良い涼しさを、葉がなびく音と水の音が、静かながらに後押しし演出している。

 川に沿って進めば目的地に達するというのも、風情があっていい。

 葉の揺れに合わせて揺れる日の光を、水面が反射し、幻想的に木々を染めている。

 あとは鳥のさえずりでもあれば完璧だったろうが、生憎そこまで揃ってはいなかった。

 …いや、ここで鳥の声なんて聞こえたら、ただの警戒対象だ。聞こえなくてよかった。


 気が和らいだからか、時間の進みをあまり感じないまま、サクサクと歩が進む。

 そこに一旦のゴールが近付いているという気持ちが合わさり、気が(はや)る。

 このまま静かに通り抜けられれば、それに越した事は無い。



 …が、突如背後からの破壊音。木がなぎ倒されるのが、聞くだけで伝わってくる。

 背筋が凍えた感覚が抜け切らぬまま、警戒を強める。


 音の元まで少し距離はあった。けど、だからといって無視して、不意を突かれるような事はごめんだ。

 このまま立ち去るのも考えたが、まだこの先短くはない道、ずっと警戒しながらというのは気が持ちそうにない。

 それに何か戦利品があれば、街に着いた時にちょっと懐も潤う。そんな欲望も。


 ひとつ深呼吸、細心の注意を払いながら、音の元へと歩を進め始める。

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