197話 それぞれの答え③
「……分かった、それで勝負しましょう。」
手筈に従い、手札が5枚配られる。賭け金用の銀貨をいくらか卓上に出し、最低額としての1枚を中央寄りに取り分ける。
そして手札を確認する。
「さぁ、先手は譲ってやる。続行か降りるか、選びな!」
相手もまずは銀1枚の掛け金。厳密なルールでは2人だと不都合が出るから、ローカルルールでこうしてるとの事。
ここから1枚を維持か降りるか、あるいは賭け金を上げるか。
「…パスで。」
「用語的には『チェック』だな。
じゃあ俺の番だが──」
相手の賭け金に1枚が足される。
「ベットだ。さぁ、乗るか?」
「じゃあ、同額で。」
「『コール』だな。次は交換するカードを選びな。」
その指示に従い、手札から3枚伏せて卓上に出す。
「OK3枚だな。俺は…2枚でいくか。」
それぞれ引き直した札を手札に入れ確認。
ほんの一瞬だった。野で魔物と目が合った時のような感覚。
けど──
後半戦、こちらの行動だ。
「えーと…チェックで。」
「ならばベット、2枚上乗せだ。」
相手の掛け金置きに更に追加、4枚になる。
「さぁ、どうする?」
「…コールで。」
「ハッ、見た目の掛け金では弱気のつもりでも、でかいのが入る事があるのがこのルールだぜ。
俺の手札はストレート、2倍役だ。」
公開される手札、マークはバラバラだが6~10の札が順にならんでる。
「さぁ、勝負なんだろ? 手を見せな。」
相手に倣い、自分の手札を広げ卓上に放る。
内訳は、3が2枚とJの3枚。
「……フルハウス、3倍役です。」
「なっ…!」
驚きを隠せない相手、観戦してたジェイクさんがつぶやく。
「……ほう? 闇雲に立ち回った…という訳でもねぇみてぇだな。」
「実は以前郷でやった事があったので、仕掛けさせてもらいました。
無理に掛け金上げて降りられるより、相手にペースを渡した方が高くつくかなって。
…強い手札が来たのは、幸運に助けられましたけどね。」
手札が弱ければ降りるのも視野だった。それはそれでロスは少ないが、このインパクトは出なかっただろう。
「……ハーッハッハッハッ!
いいじゃねぇか、そんなぶっつけ本番一発ネタを遂げる度胸、いい手を引き当てる天運! いいじゃねぇか!
俺はトヨロズってんだ、今後ともヨソシクな!」
「えっと、セイル、です。こちらこそよろしく。」
とりあえず、乗り切った…らしい?
……運、か。
いつだったかのハルドレーンさんの言葉がフラッシュバックする。
「偶然をものにした者が英雄たりえる」だっけか。
今裏路地に居る事は、何らかの契機たりうるのだろうか?