195話 それぞれの答え①
「やぁ、着たよ。」
翌朝、部屋の前。
約束通りに来た、昨日の四つ目のひとだ。
相変わらず見れる場所はかなり絞られてる服だが、背丈や声、僅かに見える部位である顔からは同い年の青年くらいに見えた。
正面からだとこげ茶色の髪で片目が隠れ、向かって右に縦に並んだ2つが見えている。
「そっちの君とは、まだちゃんと話してなかったね。
僕はツァイシー、見ての通り鈍色仮面と呼ばれる団の一員だ。」
そう、言い服装を見せるように広げる。
「セイルだ、こっちでの役職はまだ無い。
まずは聞きたい。何故こんなに早く勧誘しにきた? まだ素性もよく分かってないだろうに。」
一番の疑問を、とりあえず最初に。
「理由は2つある。
1つは最も新しい情報。深入りして調べれない僕らより、表で普通に暮らしてるだけで自然と入りやすい情報もあるからね。」
ジェイクさんのと近い理由。それに関してはまず納得。
「もう1つは人員不足なんだ。詳しい事情は言えないけどね。」
…だとしても、夕方来て翌朝すぐにというのは、流石にいきなりすぎる。
「こんなに逼迫するほどにか?」
「うん、例え英傑だったひとだとしても、ね。」
「英傑補佐、だがな。」
「隠す事でもないし、率直に言うよ。
こちらとしては戦力が欲しいし、情報も欲しい。英傑補佐だったんなら、どちらも尚更だ。
でも、信用に値する要素も無い。
だからまずは一旦引き入れて、様子を見たい。」
「手伝えば、外の事が分かりますか?」
割り込んできたラディが、ツァイシーに問う。
「決定は僕じゃないから確約はできないけど、おそらく外での活動になるだろうね。」
保険こそかけられているが、その言葉に誤魔化しの意図は見えなかった。
「行くのか? ラディ。」
「どう…なんでしょ。」
思えば、何らかの判断をラディに任せるのは初めてかもしれない。明らかな戸惑いの様子がうかがえる。
「一先ず、このひとは信用していいと思う。今の所、言ってる事に嘘は無い…と思う。
ただ、前にも言ったけど鈍色仮面に協力する事は、英傑と敵対する事でもある。その覚悟はあるのか?」
「だって、何でおそわれたのかも分からないのでしょう?
うまく言えないけど…なんというか、納得できないです、何でなのかを探しに行きたいです。」
その言葉には、強い意志を感じた。
「決まりかな。そっちはどうだい?」
今度はこちらに振ってくる。
少しの思考の間ののち、答えを返す。
「……いや、僕はやめておくよ。狙われの身ではあるんだ、あっちの感知性能は実体験で知ってる。
ラディならもしもの時も逃げれるだろうけど……。」
「そうか、分かった。無理強いはできないしね。
ひとりででも協力、感謝するよ。」
という表向きの理由。
その実…もしテムスさん達と対立する事になったらと考えると、怖かった。