194話 情報取引⑤
道中で買った本を読み終え、閉じ脇に置く。
神話時代にはこれまで興味が無かった。実在した人物の伝記と違い、どこまでが事実でどこからが創作も分からず、現代まで残る物や地も無く。むしろ伝記上で時折争いの火種になっている事から、悪印象が強かった。
今回だってミツキの「ヤな噂」が気になって、少しでも調べる為という側面が強かった。
そんな自分だったから、こんな子供向けの絵本でも得られる話はあった。
「ゴデュラ」の名はうっすらと記憶の奥底にあった。宗教同士の争いで戦争に発展した話の中で、その一方の主神の名、確かそれだ。
だけどそれ以外は初見の情報だ。「神」と呼ばれる存在が数多いる事を漠然と把握していた程度だった。
魔法の属性それぞれに対応する神、なんともらしい話だ。生まれ持った自身の属性を元に、それぞれの神を信仰する。同じ神に対する信仰者同士は共通点から結束し、それらを全てひとつに統制する仕組みまである。といったところだろうか。
要は今回の件にはさほど関係無いだろうという事は分かった。
神話に対する捉え方はまだ手探りだが、仮にこの神話が過去に実際にあった事だとして、けどそれが今に関係するわけでもなく。
何者かが神を騙っているんだとしたら、その行動理念の参考くらいにはなるかもしれないけども。
一息ついて、外の大時計を確認。
…まだ夕方前くらいの時間。中途半端に空いた微妙な時間。
どうにも時間感覚が狂ってしまう。まだ路地裏に来て1日半も経ってないのに、異様に時間が長く感じる。