192話 情報取引④
ラディを連れ、「路地裏」を探索しに。
とはいっても当てがあるわけでもなく。
目新しい目印として大時計のある建物の方へ。
ちょっと遠いところにある、橋のように路の左右に渡る大きな建物だ。
ここの異様さそのものに少しは慣れ、少しは視野を広く持てそうだ。
道中、下の店への荷車入荷、それを見て集まるひとたち。
ちょっとした喧騒があったと思えば第三者になだめられ。
その脇で買う果実の品定めをしているひとに、鈍色仮面の一員との雑談にいそしむひとに。
陽なんて差さないから常に夜みたいなもんだし、飾り立てなんて無骨さだし、土地の都合でやたらと細長いし。
だけど、そこは確かに「町」だった。
そして自分も途中でちょっと寄り道お買い物。
ちょっと気になった話があったからと古書店に寄ったら、1件目で運よく発見。
流通の都合か大分お高くされていたが、資金にはまだまだ余裕がある。安いのを探して徒労に終わるかもと思うと逃す手は無く、無事購入。
やがて、大時計の建物の所へ。近くからだと余計に迫力のある大きさ、まるで砦のように。
その屋上、3階の屋根より更に上の、眺めのいい場所だ。
「…余計に、わからなくなってきました。」
町を見下ろしながら、ラディがぼそりと言う。
「鈍色仮面のひとたちも、ここではいいひとたちに見えました。」
「そりゃ、そうだろうな。」
全容を掴めた訳ではないが、鈍色仮面は路地裏の為の活動…を補佐する組織といったところだろうか。
在り方の形こそ違えど、その存在感は地上での英傑と被るものがあった。
「…じゃあ、何で英傑と対立してるんでしょうか……。」
その問いには、答えを返す事ができなかった。