191話 情報取引③
遊技場を出、部屋の前。
人影ふたつ、片方はラディだ。
もう片方は…見覚えあるフードの後ろ姿。
その会話がうっすらと聞こえてくる。
「──という事だ。」
「…すぐ決めないと、ですか?」
「いや、今度でもいいよ。仲間との兼ね合いもあるだろう。
いい返事を期待してるよ。」
そのひとが帰ろうとしたところで鉢合わせ。昨日見かけた四つ目のひとだ。
「おっと、間が悪かったみたいだね。」
「鈍色仮面の一員…だよな。何の用だ?」
「すまない、仲間さんの方には一通り話したから、そっちから聞いてくれ。明日また来る。」
次の用事があるのだろう、返答を待たずに階段の下へと姿を消していった。
「何の話してたんだ?」
薄暗い室内よりはと、そのまま柵前でラディに聞く。
「鈍色仮面のひとが、ちからを貸してほしいと。セイルさんにも。」
確かに鈍色仮面が求める人材要項…の推測には合致してはいる。
とはいえこんなにすぐ話が来るとは。
「なるほどね…ラディはどうしたい?」
「……どうするべきでしょう?」
返ってきたのは、あまりにも細い返答。
……そうか。
これまでラディには付き合わせる形ばかりで、ラディ主体でという経験は全く無かったのか。
「そうだな…現状を何も把握できてない以上、ここの一番大きい組織と関われるのは、大きな利点になるな。前に見たような外での活動もあるだろうし。
けど、鈍色仮面に…かぁ。」
何度か敵として相対した相手。どうしても躊躇してしまう。
「…やっぱり鈍色仮面は『敵』なのでしょうか?」
「路地裏に居る限りは『味方』だろうね。」
「じゃあ英傑さんたちは『敵』?」
「鈍色仮面側に協力するなら、そうなるな。」
「それは…いやですね。」
悩むラディ、当面答えは出なさそうだ。
「なんにしても情報が足りなすぎるんだ。とりあえず探索してから考えよう。」
「そう…ですね。」