186話 表裏ある街シント②
そこは街のようではあったが、街というには不思議な場所だった。
巨大な通路状のその地には、左右の壁に沿うように木造の建築。
階段状の三段構造が、途切れ目無く遥か遠くまで続いている。
1層は建物の幅もあり、その分道はさほど広くはない。
荷車もいくらか置いてある、主に物売りの店だろうか。看板は掲げてあるようだが、ここからではよく読めない。
その上に位置する2層は、1層より建物の幅が無い。その差の分だけ空いた屋根は、簡素な柵が設けられ、そこもまた通り道となっている。
所々に階段や左右を渡る橋があり、道として不自由ないように作られている。
1階とはまた別途として建てられているようで、上下とはそれぞれ繋がりは無いように見える。
さらに上の3層も、同様に2層の屋根の一部を通路としている。
しかし橋はかけられておらず、その上の階層も無い。
数多の建物の集合であるそれは3つの街並みが重なり合っているようにも見え、全てがひとつとして回っているようにも思えた。
そして何より……
「伝えるべきルールは1つ。過去の事について答える義務は無いし、それを強要するな。」
ここまで案内してくれた鈍色仮面に、先手を打たれた気がした。
「不満か? 迫害を受けた奴もいるんだ。察しろ。以上だ。」
去ろうとするところに、疑問を投げかける。
「何故助けたんだ?」
「そういうルールにしたからだ。私情で例外を作っては、綻びがでかねん。」
そう言い残し、そいつは人の流れの中に消えていった。
道中の説明から、ある程度察しはついていた。
ある者は猫人のように獣的であり、ある者は人のようであるが一部が異形化していたる。
他の国では人族の一種に分類されそうなひともいれば、レミレニアでの事を思い出す魔物飼いの人も。
いざ目の当たりにすると、気になって仕方がなかった。
そういった、「こちら側」の住民たちの事が。