183話 また今度②
目が覚めた時には、もう昼過ぎだった。
既に周りは撤収モードに入っていて、丁度ニッグさんが呼びに来るタイミングだった。
体の調子は良くなったが、まだ寝ぼけて意識ははっきりしないまま部屋で荷物の準備。
元々持ち込んだ物が少なかったしで、準備はすぐに済んだ。忘れ物は無い…はず。
そんなこんなでやっと一息つけたのは、送りの車内だった。
見送りとしてニッグさんが同席、こちらから先に話を切り出す。
「ラディから聞いたよ。助けてくれたの、ニッグさんだってね。
ありがと。」
あの一撃をかました後、どうにかニッグさんが追い付いて、それで助かった。
だけど強引な飛び方をしたらしく、空中で制御を失った所をラディが水術で受け止め、無事に済んだ。
そう聞いた。
「……それだけですか?」
まだ言葉が足りない。ニッグさんの様子は、そう言いたげだった。
「えぇと…無茶してごめん。」
「ほんとですよ。助っ人として身柄を預かる側としては、責任問題にもなりますし。
…その為とはいえ、こちらもラディさんに助けられた側でもあるので、あまり強くは言えませんが。」
「そうか、そうだよな。
『犠牲に』だなんて過去の事なら美談でも、今は次第によっては責任問題…か。
難しいな、英雄って。」
「…と、ここまでが冒険団側として言うべき事として。」
ここでニッグさんが一気に改まる。
「あの時…ヒュージ・フラベラに向かって行った時、レミレニアでの事の一端を見た気がしました。
左腕を失くしたという時も、相応の無茶をしたのでしょうね。」
少しの思考の間ののち、言葉を続ける。
「…無茶は程々にしてくださいね。
これからの活躍の報、楽しみにしてますので。」
あまり強い事を言えない立場、個人としての応援。
その隙間を探した上での言葉だろう。
「…気にするようにはするよ。」