176話 遊撃③
ニッグさんによる照準調整が終わり、タイミングを待つ。
何匹いるのだろうか、縦横に広がる群れの末尾が見えてこない。
…いやまて、まだ大分距離あるよな?
何でもうこんな明確に姿が分かるほど視認できているんだ?
「こちらF砦ニルグニッグ班、『ヒュージ・フラベラ撃退戦』開始します!」
通信装置のむこうにも向け、ニッグさんの合図。放たれる大砲、衝撃にすら錯覚する爆発音。
放たれた弾は術により制御された火薬で加速し、すぐに見えなくなる。
数秒ののち、閃光。
相手の反応を見るに命中はしてないようだが、そういうものなのだろう。あくまで目的は撃退だ。
「次、装填を!」
見惚れてしまってたところにニッグさんの声。既に次の大砲を用意している。
不意でびくっとなりつつも、弾を抱え使用済みの大砲へ向かう。
弾を込め閉めた所で丁度追撃の音。休む間も無く次の弾を取りに。
その装填作業中に次の一発。こちらの作業がちょっとずつ遅れてきている。
ラディから手伝ってくれる提案があったが、手順をまだ把握してないラディではむしろ邪魔になりかねない。後ろめたさはあるが、断っておいた。
回数を気にする余裕もできないまま、気付けば追加分8発目の装填が終わり。
ニッグさんは1つ手前、通算11発目の準備中。どうにかギリギリ間に合った。
「弾、最後です!」
「了解、移動の準備を!」
準備といってもこれといってする事も無く、観察の猶予。
さっきよりは大分近付いてきている…とはいえまだまだ距離はある。
他の砦からも撃ち始めているようで、ニッグさんの砲撃以外の爆裂光も見える。
群れが少し左に向いてる…気がする。このまま逸らしていって、シントの真上を通る軌道から脇を通る軌道に修正する算段だ。
しかしやはり末尾は、まだ見えてこない。