174話 遊撃①
「で、時が来たら具体的に何をすればいいんだ?」
昼過ぎ、大砦周辺の森。
説明のためにと、移動の途中。
少し前の事だ。
ニッグさん伝手に通達、それぞれの役職が決まったそうだ。
自分達は「遊撃」。それだけ聞かされ詳しい説明は道中でとの事だった。
「まずは改めてこの場所の説明を。
『ネイギス砦群』、対空特化の砦ここまでは以前説明しましたね?」
「あぁ。……『砦群』?」
これまであまり意識していなかったが、こうして聞くとちょっと引っかかる名前。
「はい。あの大砦に加え、周囲随所に配置された多くの小砦。それらを全てで『ネイギス砦群』です。
そこでの砲撃や移動のサポートをお二人にお願いします。」
「…砲撃の経験は無いよ?」
「砲撃そのものはこちらで行います。基本的な役割は変わらず、大砦で教えたように装填や状況把握の担当を。
それに加え、小砦間の移動道中の魔物の撃退、その助力を。」
なるほど、それで野での戦いを見てたってわけか。合否じゃないってのも、まぁ、方便か。
そうこうしてる内に見えてくる、大砦と同じように蔦の絡められた岩壁。
中は倉庫らしき2部屋、複数階分ある空きスペースと外周に沿う階段。かなりシンプルな構造。
階層による区切りは無いが、見た感じ街の建物と同じくらい3階建て相当といったところだろうか。
「おおよそは見れば分かるとは思いますが、一応説明を。
奥の倉庫が弾薬などの倉庫、手前が仮眠室を兼ねたその他倉庫。
他の小砦も、全て同じように作られています。」
屋上は周りの木より少し低く、大砦と比べると視界が悪い。逆に外敵から見つかりにくくする意図でもあったのだろうか。
対空の大砲が4門。それらが守るべき方角、南西向きに配置されている。
「運搬機構は大砦と同じで……ちょっと失礼。」
不意に通信が入ったらしい、耳元の通信装置に意識を向ける。
大砲脇にある装置は、確かに大砦ででも見たものだ。下が直に倉庫に繋がり、少人数ででも運用できるようになっている。
「え、まってそんな想定より大分──」
うろたえる声、それを聞き届ける暇無く通信が切られたらしい。
少しの間ののち、こちらに向き直り。
「…状況報告です。
今よりここが、ヒュージ・フラベラ撃退戦の最前線です。」