169話 代償の穴埋め③
昼過ぎ、砦近場の森。
ここんとこずっと街の中にいた事もあり、この見通しの悪さ、葉の音、足場の悪さ、どれも懐かしい。
レミレニアの時と違い高濃度魔力が無い分、前より動きやすい。
「それで、何をすればいいんだ?」
移動中、先導してるニッグさんに聞く。
「この森の魔物を1体、討伐してもらいます。」
「対象や方法は?」
「問いません。但し環境に著しい影響が出るものを除き。
その選択も、試験の内です。」
思ったより、かなりシンプルな要求だった。
倒せる事は前提として、そのやり方を見る、といったところか。
「了解。どうしようか……。」
しばし周囲を観察。
とりあえず近場にはそれらしい姿は無く。
ちょっと離れた場所に川、その周囲に幾らかの影。
その中の一団、3頭の猪魔物に狙いを定める。
久し振りの野戦、それもエンのいないものとなると、かなり久し振りだ。
更に辿れば、ラディとの二人きりでのとなると、レミレニアに着く前だとかの少しの期間しかない。
無理に合わせるよりは、明確に役割を分けた方がいいだろう。
「僕が主動でやろう。ラディはもしも後ろに通しちゃった時の為に、拘束待機してて。」
「ひとりで大丈夫です?」
「元々一人でやってたんだ、大丈夫だ。ついでに感覚取り戻したいのもあるし。」
「了解です。」
という建前兼ねた理由半分。もう半分は、ラディが癖で正体バレやらかさないように。