165話 冒険団③
暫くして荷車が止まり、目的地に到着。
前方に窓が無く見えなかった到着地を、降りて初めて目にする。
「ここが活動拠点、『ネイギス砦群』の中心、大砦です。」
降りた場所が近いからそう見える…というのもあるだろうが。
…でかい。石造りの建物に蔦が絡みつき、先が森に紛れてサイズ感が分からないほどに。
低い階層には窓も無く、建物というよりは、最早「壁」と表現したいほど。
「よくこんな所に、建てれましたね。」
荷下ろしが終わったところで、ラディからの疑問。
「いえ、いくらかの補修は行いましたが、建物はもっと古く建てられたものです。
暦3400年頃…およそ1100年前、隣国『カムニカ』との争いを想定し、建てられたそうです。
その時は結局争いには発展せず使われませんでしたが、その後の『人竜争乱期』や『サタン事変』では戦力の要として活用された、という記録があります。」
「…『対大魔王第一防衛戦線』。確か国外れの古い砦での戦いだったと聞く。
もしかしてそれか?」
「それですね。対空の防衛線の為に作られたこの砦が、双方に対して相性が良かったようです。
そして今回も──」
長々と続いてしまいそうな談義。それを止めてくれたのは、ラディからの疑問だった。
「この蔦は掃除しないのです?」
「これは魔物が嫌がるの植物を絡ませてるのです。
見た目のカモフラージュにもなる、先人の知恵ですね。」
その説明に、どうにも納得いってない様子。自分には効力が無い事で怪しんでいるらしい。
いや、お前は魔物としては異例すぎるからだと思うぞ。