162話 続く報せ③
到着した街外れ、煙突のある建物群。
その中でも特に大きな一棟。鍛冶群の管理中枢であり、ここ自体も大きな鍛冶場だ。
カウンターの向こうからハンマーの音が、こちらまで響いてくる。
以前使用していた短剣を調整の為に預け。さほど劣化した感じはなかったが、どうせならと念の為。
そして防具用品の見定めが一区切りついた所で、タァからの疑問が。
「防具は見てもらわなくていいのか?」
「あぁ、そっちは自分でやるからな。最終的に自分の命を守る物は、自分で確認したい。」
「それは何でなんだ?」
「その方が落ち着く…というのもあるが、もしも何かあった時の責任を押し付けない、というのが聞いた心得のひとつだ。
もしも防具の不全で危機に瀕した時、それは他の何者のせいでもなく、自分の未熟さによるもの。そういう考え方だよ。」
「…そんな心持ちの問題なのか?」
「という建前の上で、ちゃんとした理由もある。
一度研げば余程の扱いにならない限り、しばらくは問題無い武器と違って、防具は細かい損傷と修繕の繰り返しだ。
ベルトの傷や金具の歪み、道中でそういったチェックをして、必要とあらば交換、補強する。
そういった事が必要な時もあるから、自分で管理できる方が都合がいいんだ。」
「もう1つ聞きたい。
その鎧、オレが知ってる物よりかなり軽装なんだけど、本当にそれしか着けないのか?」
そう言い、サイズ確認の為に卓上に並べていた鎧を指さす。
関節部に装着する部分鎧。不要と感じた部位を減らし、今は4パーツだ。
「足場の悪い所が多いからな、重い鎧は不向きなんだ。
それに、街の間を渡る時にそんなもん着てたら、一日も持たないと思うぞ。」
「だとしても、こんなんで鎧の役割果たせるのか?」
「肘と膝とか…なんて言ったらいいかな、咄嗟に格闘術で使える打撃武器、が運用法としては近いかな。
『防ぐ』というよりは、カウンターを当てる事で結果的に防ぐ、といった使い方だ。」
「…大変そうだな、使いこなすの。」
「まぁ、徒人と猫人じゃ事情もかなり変わりそうだし、あくまで一例程度に留めておいてくれ。」