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15話 パーティ結成①

 それから数日、連日で採取依頼。

 納品量不足になった事はここまで無く、むしろ小型魔物素材に至っては良質な状態だ、と指名で依頼された事も一度あった。

 獲物の解体は手伝う事も多くて慣れてたもあったが、外傷無く捕らえてくれたラディのお陰も大きい。

 今日納品する分も、おそらく大丈夫だろう。


「よっ、少年達。」

 このコンジュさんの乱入にも、もう慣れたものである。

「その少年達っていうの、そろそろどうにかなりません?」

「しょーがないじゃん、通り名を聞いてないんだし。

 別に本名でもいいけど、通り名何か決めなきゃここじゃ浮くよ?」

「『とおりな』とは、なんでしょうか?」

 そのラディの質問に答えようとした所に、コンジュさんに先を取られる。

「冒険者の習わしだよ、利便性も兼ねた。

 例えば突発的な戦争が起こって、大勢の冒険者が戦力として集められたとしよう。その時にわざわざ名乗っても、覚えるのも大変だし、瞬時に伝わりづらいじゃん? だから主に自分の戦力面とかから、分かりやすい名前を使ったわけ。使う武器の名前を入れたりして、ね。」

 一息の間を開け、コンジュさんが続ける。

「ま、今はそんな戦争なんて起きやしないけど、実際便利ではあるし、『かっこいいから』なんて理由も添えられて、風習だけ残って今に至ってる。

 要は伝わればいいから、見た目からサクっと決めちゃうのも手よ。そっちの子なら『蒼袖』そか、そんな感じでさ。」

「なるほど、知らなくても分かるべつのなまえ、ですか。

 『あおそで』…わかりやすくていいですね。」

 ラディは術士として登録を出してて、武器を持ってはいない。服装から取ったその名前は、妥当なラインだろう。

 しかし、自分より先にラディが通り名を決めるとは……。

「…しかし改めて考えると、自分の通り名って難しいな。見た目だけで決めれるならいいけど、剣士って人口も多いし。」

「別に焦って考える事でもないんじゃない? 特に名乗らず活動してたら、いつの間にか通り名で呼ばれてたって事だってあるし。

 それより、朗報だ。パーティ編成の申請、通ったぞ。」



 冒険者を目指す人が、パーティを組むのに都合のいい人数を集めるのはハードルが高い、という事から始まったのがギルド側でのパーティ編成だそうだ。

 しかし利用するには銅板級以上…信頼できる冒険者と認められる必要があった。それが通ったという事は、組む相手が見つかっただけでなく、木板級から卒業という事も意味している。

「じゃあ銅板章も…?」

「多分な。その話が聞こえたのは昼前だったし、もう出来てるだろ。

 これからは一人前の冒険者だ、精々稼いでくれよ?」

 そう言い残し去るコンジュさんは、やはり酒が回ってる様子だった。



「これが『どうばん』、といやつですか。」

「あぁ。まだまだ初歩のランクだけど、一人前の証だ。」

 今日の分の報酬と一緒に渡された、2つの四角い銅の板。ギルドに最低限の実力を認められ、信用に足るとされた証。

 受けれる依頼もランクアップし、探索範囲も拡張。明日からはいよいよ本格的な冒険だろう。

 その為にこれから組むパーティメンバーとの待ち合わせという事で、しばらく待機である。

「…いつもよりしずかだけど、大丈夫です?」

「そりゃあ、ね。

 これまで『冒険者』って、こっちが宿営地を提供する側で向こうがお客側って、分かりやすくてよかったんだよ。

 でも今回は対等な仲間としてと思うと、緊張しちゃって……。」

 自分でも自分の言葉が、正しく言えてるかすら分からなくなってきてる。頭が真っ白になる中、周りが過剰に気になりそわそわする。

 この席で待ち合わせという事は、向こうから移動してくるんだよな、とか気になり始めると、席から立ちあがる人、こちら向きの足音、そんな些細な事ものが気になって仕方がない。



「パーティ編成希望のセイルさん、で合ってるかな?」

 そんな無駄に濃度が高い時間が、どれだけ経っただろうか。

 足音無く来てた背後の者の声は、気が張り詰めた中で十分すぎる不意打ちだった。

「あ、あぁ、そうだ。」

 椅子から転げ落ちそうになったのをどうにか立て直し、その声がした方へ。

 …いない? いや、声の主はもうちょっと下。小柄な種族である、真っ黒な毛皮の猫人だ。

「パーティ編成希望、『雷雨』のエンよ。よろしく。」

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