148話 明るみの影①
祭りの余韻も収まり、仕事量も徐々に戻り。
屋台の撤収作業も終わり、すっかり普段の風景だ。
年2回との事だが、半年後まで自分は英傑を続けてるのだろうか。そうだとしたら、どんな英傑になってるだろうか。
それとも新たな冒険を求め、違う街に行ったりしてるのだろうか。その場合、祭りの時に遊びに来る事はできるだろうか。
なんて考えながら街の様子を見ながら移動中、普段とちょっと違ったざわつきが。丁度向かってる方向だし、少しだけ様子を…と中心へと向かう。
しかしその原因は、なんてことはない英傑の戦闘だ。
…いや、おそらく珍しい状況だ。
片や鈍色仮面。推定するに、当初のターゲットを逃がし終えてしまった所だろう。
いくつもの火球を浮かべ、相手の出方を伺っている。
片や英傑、所属チームのユニフォームと最低限の武器・装具のみ。
祭りの先鋒を思い出す軽装は、新人のそれだろう。
でまぁ、そんな組み合わせで対峙してしまう事自体が事故みたいなわけで。
新人英傑の方が下手に動けず、剣を構えたまま立ち尽くしてしまっている。
鈍色仮面も、これまで見た傾向からしても組織として戦闘に積極的ではないのだろう、あちらから仕掛ける様子は見受けられれない。
そんな分の悪い膠着のまま時間だけが経ち、注目を浴びてしまっている、といったところだろう。
仮にも英傑なら自力で状況打破してみろ、とも思ったが、それ以上にこの状況を見過ごすのは気が引ける。
ここまで来てしまった以上、これくらいはもう誤差。そう自分に言い聞かせ、装具のギミックを起動する。
薄灰色の作業服が紺色の布に包まれ、顔も目元を除き覆い隠す。
短剣に軽く魔力を流し、青い紋様がうっすらと浮かび上がる。試した事は無いぶっつけ本番だが、術を十全には発揮させず朦朧とさせる程度に、という狙いを込めて。
飛び降りにも慣れたものだ、今なら経由地点なしで狙った場所への着地も容易い。
無防備な鈍色仮面の背中に一太刀、そのまま逆側の建物へ跳躍。
下との視線を遮りつつ、その場から立ち去る。
思惑は通っただろうか、あの新人は決着を付けれるだろうか。
気にはなるが、これ以上時間をかける訳にはいかない。成功を願いつつ、元々の目的地へと向かう。