147話 残り香
翌日。
昨日の事が嘘のような静けさ。
一応もう通常業務ではあるが、昨日の後だからか活動件数は非常に少なく。
祭りの前までの半数…いや、もっと少ないだろうか。
こうして屋上の淵に腰掛け休む時間すらある。
装具のギミックによる偽装用の作業服が、見た目に反して風通しが良く心地よい。
下では屋台の片付け作業。
昼過ぎにはもう大方の解体は終わり、大量の荷車が出動していた。
倉庫の荷物や屋台の部品を積んでは運び、次の荷車がやってきて。
それに二人がかりで柱の木材を積んでいき。
その一連を文字通り高みの見物できる事に優越感と、ちょっぴり罪悪感。
そんな感じですっかり撤収モードな中、祭りの残り香もあり。
店先や家屋の装飾は各々の私物だそうで。どれも片付けようと思えばすぐに済む程度の簡素なもの。
それでもまだ飾ったままの場所の方がほとんどなのは、意図してそうする風習でもあるのだろう。
しかし設営に数日、片付けも今日中には終わらないだろう。
それだけの手間を当日の1日だけの為にというのも、勿体ないような……。
…いや、1日だけだからこそ全力で、か。
欲張って何日かに渡ってやるより、あえて1日だけに抑えて凝縮して。
そんでこんな感じに余韻に浸るくらいが、丁度いいのだろう。
とか耽ってたら、ミレースさんから次の指示。
もうちょっと眺めていたかったが仕方ない、行くか。