145話 夏フェス⑥
「…なんか悪いな、そんなもんで。」
継いだ4発の戦績は散々だった。
3発はどこにも当たらず、最後の1発は大きく逸れ。
ラディが取ったのと同じ物を狙ったはずなのに、結果取れたのは炎がエンブレムを模る蝋燭。
ラディにあげるためにと意気込んでた分、自分の射撃精度の低さが恨めしい。
「いえ、丁度レミレニアで買ったの切れたとこでしたし。
それよりほら、お店はまだまだまわれますよ!」
そこからは、ほぼラディが主導を握っていた。
ラディが興味を持った店を順番に周り、待機人数少なければ挑戦し。
大いに振り回されはしたが、出会ったばかりの頃を思い返すと、それだけラディが自発的でいてくれるのはなんだか感慨深い。
そうしてひとしきり周った後、塔広場まで戻った頃には、もう舞台の昼の部は終わっており。
さっきまで上にいた英傑達は、広場に散開していた。
やはり白衣装の方が人数が多く、それぞれが場所を取り、派手な技で気を引いたり、一芸を披露したり。
皆、名を売るのに全力なのだろう。その段階を飛ばせた優越感に、ちょっとだけ申し訳なさもある。
そしてその中でも特に濃い人だかり。
中心には黒衣装、舞台では悪役だったベテラン達だ。こちらはやはり名の知れた側なのだろう。
立て看板によると、写真の撮影会らしい。一緒に写真を撮る為に、人々は行列を成して待っている。
仮にも英傑側の立場という自覚からか、ラディは自制している。が、かなりの感情を押し殺してるのは見て明らか。
…そもそもその英傑活動も、付き合わせちゃってるところが強いよなぁ。
僕自身もほぼ流されるままだったけど、もっと好転させられる何かはあったんじゃないだろうか。