143話 夏フェス④
オープニングが終わり、人が会場全体に散っていく。
それぞれのお祭りプランでもあるのだろう。
ラディもまずは好きに探索してみたいとの事で。
お昼時で丁度いいし、と待ち合わせ約束だけして個別行動だ。
そうして地図とにおいを頼りにたどり着いたエリア。
入り乱れる屋台群の中、比較的食の屋台が多い場所。
いくらかは普段から見かける店舗の出店だが、全く目新しいものも多い。
屋号すらない一品のみの店なんかは、この祭りの為だけに用意されたものだろう。
しかしそういう屋台に「祭り」を感じるのは共通認識なのだろう。そういったとこは人が多く、かなり待たされてしまいそうだ。
迷って余計に時間をかけてしまうくらいなら、と結局見慣れた名の所へ向かう。
…屋台の規模の都合か、流石にメニューは絞られてた。
買ったのはひき肉をパン状のもので包んだ物。恐らくこういう場でも食べやすいからというチョイスだろう。
どうせなら最初は待ってでも「祭りらしい物」にしたら良かったかな、とか迷いは残ったが、まずは目の前の白い柔らかさにかじりつく。
……。
…うまい。
いや、前にも何度か食べた事はあったし、今回のもそれと同じはず。
だけど、いつもよりすっきりしてるような、そんな錯覚。
…そうか。
それもまた「祭り」の一部というわけか。