139話 幕間:黒い武器と白い武器
「そういえば、テムスさんの武器って僕のと違いましたよね。」
明日が楽しみで待ち遠しい中、ふと疑問が思考をよぎる。
「そういや、取り急ぎで渡してそれっきりだったな。
いい機会だし改めて武器の事を説明しておこう!」
「この黒いのが現在普及しているもの、正式名称で言えば『青紋刃』と呼ばれる武器群だ。
名の由来は見た目通り、起動時に浮かぶ紋様からだな。」
手近な短剣型のをテムスさんが手に取る。自分が使ってるのと同じ型だ。
黒地のそれに、青く輝く紋様がじわりと浮かび上がる。
「魔力を流すと、こうして中に仕込まれた術式を通し、仕込まれた催眠の術が発動する。」
「そして刃にあたる部分から相手にかけ鎮圧する、ですよね?」
「あぁ、そうだ。
ちなみに黒いのは素材的な都合だそうだ。一時期着色された時もあったが、使っている内に塗装が剥がれて酷い見た目になってしまったらしい。」
「…なるほど。」
「そして、俺が使ってるのはこれだ!」
テムスさんの持つ筒が、一気に伸びて棍になる。
…いや、以前は遠くて分かりづらかったが、こうしてよく見ると、一瞬光の粒子状になっている。
「それって、これに似ているような…?」
少し集中し、左腕のイメージを曖昧にする。
左腕を形作っていた魔力が緩み、色が失せ光の粒子が舞う。
「それが『現出の輪』か。概要は手紙で聞いた。
だが、これはそこまで自由に扱えるものではないな。いくらかの形状を記録し、使い手の魔力によって武器となる。」
「なるほど、簡易版であるが故に実用化に成功してる、と。」
「利点としては持ち運びコンパクト、そして複数の形状を瞬時に使い分けれる自由度
加えて破損にも強い耐性があると言えるな。
ただ2つ難点があってね。1つは『青紋刃』のような複雑なものを再現する技術はまだ無い。
だからできる事はあくまで制圧まで。拘束・連行するには別途物資が必要になるな。
もう1つは…少し試してみるといい。」
一度格納された武器を手渡される。少し魔力を込めると、再び棍に展開する。
棍の扱いは分からないが、短めに持って剣の感覚で軽く振ってみる。
静止状態では非常に軽い。けど、振る時に奇妙な重さを感じる。丁度左腕と同じような。
「なるほどこれは……。」
「技術更新が無くて頓挫かと思ってたが、その左腕を見る限り、何らかの試行錯誤は続いてるようだな。
難点さえ解消すれば非常に便利な物だ。是非ともいつか完成してほしいものだ。」