138話 祭りの予兆⑤
138話 祭りの予兆⑤
本番前日の夕方には、街はほぼ仕上がっていた。
帰り道、途中でちょっと寄り道。
塔の広場では屋台の設営が完了し、残るは当日の準備のみ。
街の装飾もかなりの規模になり、英傑の路から降り辛い箇所も多い。
そういう場所は対応区画から外され、こうして見に来る機会は減ってきていた。
だからといって警備されてないかというと、そんな訳はなく。
普段通りの人員とは別に、地上で警戒にあたる人員も配備されてると聞いた。けど実際に誰が担当してるかまでは把握の外。
…というのも、うちから地上配備員が出されてる訳でもなく、詳しい話は聞かされていない。
聞けば教えてはくれるんだろうけど、別にその情報に興味がある訳でもないし、何より聞いても多分まだ分からない人だ。
けど、こうして直に来てみると、それっぽい人は何人か見かけた。
加えて特筆するなれば、荷車が通る頻度がこれまでより多かった。
そのほとんどは布袋の物資、それらが広場付近の倉庫と思われる場所に運び込まれていた。
おそらく当日屋台に並べる物、日持ちのしない食料品が主と予想を立てる。
予兆は、表立ったものばかりではなかった。
大通り沿いの店を中心に、普段よりも早く閉めている所が目立つ。
明日何かをする仕込みでもあるのだろうか。派手な動きでこそないが、なんだか普段よりせわしなさを感じる。
街の様相がそんな傍ら、自分達は明日はフリーだ。
どちらかといえば関係者側に属するだろうに。
もちろん、祭りがどういう催しをするのか楽しみではある。
「謎の英傑」というキャラ付けの都合も、納得はしている。
それでも、この中途半端な立ち位置に思う所は残ってしまう。