133話 祭りの予兆①
「あぁ、『夏フェス』か。
そーかそーか、外から来たって事は初めて!」
質問に答えてくれたのはテムスさんだった。
「ここじゃメジャーなお祭りなんです?」
咳払いののち、改まってテムスさんが答える。
「説明しよう!
フェスタとは英傑主体の年2回のお祭りである!
演武あり出店あり時折ゲストあり! 英傑側としても、大勢の前で存在をアピールするチャンス!
だから民も街も英傑にとっても、スペシャルな日だ!」
「それって警備は大丈夫なのかな…?」
聞いて最初に思った事はそれだった。
祭りというものは聞いた事はあるし、盛り上がるべき話なのだろうとは思う。けど、実際に経験した事は無く、実感が来なかった。
「当日は出演スケジュールと合わせて特殊な配備プランが組まれる。だから心配無用!
それに、祭りの争乱の中で事を起こしてみろ、忽ち捕まり見世物となるだけだ。そんな中で誰が事を起こそうか?」
無茶な理論とも思いつつも、それもそうか、と思う説得力もその言葉にはあった。
「それで、アピールチャンスという事は新人英傑もそこに参加するのか?」
今度の質問はミレースさんの方から回答が飛んできた。
「そりゃもちろん。なんなら開会直後は新人の出番、顔見世としての側面は特に強いな。
…が、お前らに関しちゃ今回はお休みだ。」
「それは、英傑補佐でしかないから?」
ミレースさんがいたずらっぽい表情と共に、首を横に振る。
「いいや、違うね。」
「じゃあ加入が直近すぎるから?」
「それも無くはないが、決定的ではないな。」
「じゃあ何が理由で…?」
別に檀上に興味がある訳ではないが、ここまでくるとただただ気になる。
「お前らの場合、逆に表に出ない方が目立つだろ?
『噂のアイツがいない』、ってな。」
「あー…確かに。」
いくらかのパターンを妄想してみたが、隠密というキャラ作りを維持したままというのはやはり無理があった。
「ま、折角の祭りなんだ。
最初は気負わない立場で楽しめばいいさ。」