128話 幕間:上層と下層
「上層と下層って…?」
ふと呟いた疑問に答えてくれたのは、ミレースさんだった。
「文字通りだよ。シントって全体がゆるく丘になってるだろ?」
「それは来る時に見ました。」
「んで、街の内情はざっくり二分されてんの。
大多数の人が暮らすここと、政治的なお偉いさんたちを中心としたとこ。
それが街の低書と高所で別れてるから、そう呼ばれてんだ。」
少し間を空け、ミレースさんが言葉を続ける。
「『下層』はこの辺りも含まれるし、まぁ大体見ての通りだ。
特に出入りに制限も無く、広く他所の奴らも自由に行き来する、人も物流も多い、騒がしいとこだ。」
「もう少し言い方なかったんです?」
「伝わったなら別にいーだろ。」
「それは、そうだけども……。」
「で、『上層』は…要はお偉いさんが暮らすとこだ。」
「それって政治的に偉い人が?」
「そういう奴らもだし、昔功績を挙げた高名な一族とかもだな。例えば街の設立に関わった奴らとか、当時の護衛騎士とかの末裔がな。
建物も古いもんを改築・改造してっから、こっちよりも複雑で巨大だったりするな。」
「それって、英傑の移動手段は大丈夫なんです?」
「それも込みで上層の英傑の個性だな。
英傑によって壁走りの技術があったり飛行系の術を使えたり、色々だ。
ま、そもそも英傑の出動自体少ないがな。」
「…というと?」
「下層とは在り方が違うからな。
下層で名を揚げた英傑が、引き抜かれる形で上層に行く。
んで『あの実績のある有名な英傑が守ってますよ』ってアピール、存在そのものを抑制力にしてるんだよ。」
「ほとんど『居るだけ』、ですか。
それって英傑としてはなんか……。」
「そんなん、元から英傑なんて仕事が無い方が平和でいいだろ?」
「…それは、確かに。」