126話 束の間③
そしてたどり着いた図書館は、思ったよりもこじんまりとしていた。
あえて木目を露わにした、周りよりも静まり返ったような意匠。
中の広さも控え目で、吹き抜けとなっている2階まで入口から見通せるほど。
3階への階段も見えるが、柵で封じられている。立入禁止の倉庫かなにかだろうか。
入口脇のカウンターに司書がひとり。こちらを軽く一瞥し、自身の手元の本に目を戻す。OKという事だろうか。
他には誰もいない様子。ちょっと気まずい。
埃掃除すら甘い本棚も多く、人が多く来るような場所ではないらしい。ちょっと寂しさ。
そもそも自分から娯楽を探さずとも「英傑」という娯楽があるからだろうか。
「ここにアイデアのヒントになるものが?」
確かに図書館ではある。それは間違いないのだ、が。
「…あるといいんだけどな。正直、想定してたよりかなり……。」
気を取り直して本の並びを見る。
見た事の無い名前がずらり。タイトルから察するに、1階の本は英傑の伝記だろう。
個人的に気にはなる。だけど今回の目的、ラディの英傑としてのキャラ作りの役には立つのだろうか。
「とりあえず…どれか気になる題名のはあるか?」
「えーと、どれがなにだか……。」
その返答に少し思案。そして失念していた、懸念すべき事項に行きつく。
「…そういえばなんだけど、さ。
ラディって字は読めるのか?」
「…いえ、まったく……。」
やっぱりそうか。
今思えば「英傑図鑑」は文章の少ない子供用の本で、大半は挿絵だった。
「…分かった。こっちで選定しよう。
何か知りたい事とかある?」
「そうですね…じゃあ何で『英傑』という役割ができたのか、調べられます?」
「『英傑の起源』…か。ちょっと探してみるね。」
少し手間取ってしまったが、端の本棚に歴史書のゾーンを無事発見。
その中の1冊を手に取る。