125話 束の間②
申請は無事通り、数日ぶりの自由時間。
ついでにアレの場所を聞き、手持ちの地図に更に追記あり。ちょっと離れた場所だが、そこが最寄との事だった。
この数日「英傑の路」の経験を経て、景色の見え方は大分変わった。
大通りを横切る看板のアーチは橋に、建物から突き出した看板や街頭は上下を行き来する足場に見える。
装具の無い今は登る事はできない。けど通り道は確かに見える。不思議な感じだ。
ラディなら体捌きだけで登っていけるんだろうなとか思いつつ、はぐれないように手を引く。
大通りを渡る途中、ふと不自然な人だかりが目に入る。
それはおそらく、別の視点からは見慣れた人だかり。
様子を見ていこうか、そうラディに聞く前に、逆にこっちの手が引っ張られていく。
しかしその中心が見える前に、飛び込む二人の声が響く。
「一に輝きしは初の光!」
「二に煌きしは終の光!」
「「『瞬光捕縛』!」」
閃光の先端が、距離があるここからでも垣間見える。
姿はよく確認できなかったが、あの名乗り口上と光の術、雑誌で見た「ジェミナイツ」のものだ。
その活躍を見れなかったのは残念ではあるが、間に合わなかった以上、立ち止まっても仕方無い。
名残惜しそうなラディの手を引き、再び目的地へと向かう。
そうして大通りを超え、地区の南西エリアから南東エリアに。
この辺りはあまり来た事が無く、地図を手放せず。
ラディの方からも迷子にならないよう手が握られ、放すわけにもいかず。
「左腕」をもっと扱えれば楽ができたのかな、とか思いつつ。
そしてたどり着いた図書館は、思ったよりもこじんまりとしていた。