119話 フライング②
「ラディ、ここで待ってて。」
「え、あ、はい!」
手持ちの道具類をラディに押し付け、下の路へと向かっていく。
念の為にと言われ、借りた武器をそのまま持っててよかった。
逆手持ちで引き抜きながら、降りるルートを確認。
街灯が高さで見て丁度中間地点。
どうしても怖さはあるが、装具の浮力を頼り2段飛びで屋上から降りる。
街灯への着地まではうまくいったが、その次の跳躍が思ったよりも飛んでしまった。
立ちはだかるよう相手の前に着地するつもりが背後まで。けどそれはそれで都合が良いかもしれない。
「ひ…っ!」
短い悲鳴と共に、相手が振りむきながら勢いのままにナイフを振るう。
力の込もってない単純な振り。明らかに扱いに慣れていない。
一度こちらの短剣で受け止めてから、義手で刃を掴む。にぶい痛みが伝わってくるが、特に問題は無い。
そのまま伸びきった手首に膝の蹴り上げ、握りが緩くなった瞬間にナイフを回収する
並行して自分の短剣をしまい、腕を掴み引き倒す。
脚も使い、地面に拘束する。どうにか逃れようともがかれる、が放しはしない。
「うぐ…こんな……!」
こういう時に、英傑として何と言うべきか思い浮かばない。
けど今優先するべきはそこじゃない、と割り切る。仲間がいないとも限らない、周囲に警戒を貼り続ける。
だがこちらも大きな身動きが取れない。ラディがうまい事伝えてくれるといいが。