113話 英雄特訓③
手に取った報道誌は、装丁も印字も綺麗に作られている。
そして表紙に大きくあしらわれている写真。そういう技術があるのは知ってはいたが、ここまで鮮明なものを見るのは初めてだ。
…とはいえそう長くは保てないらしい。下の方の冊子になるほど、写真部分だけが薄くなっている。
内容はというと、まず表紙から最初の見開きにかけて目立つ、英傑達トップ3チーム。
それぞれが見開き2ページ分を使い紹介され、写真と共に目立った活躍や、多数のコメントが添えられている。
最初に載っているのは3位のチーム、「防衛団一番隊」。一言説明文によると、最古参の大所帯との事だ。
活躍内容は道案内や失せ物探し…「英傑」という肩書に疑問を抱くものばかり。
住民のコメントも、なんというか、牧歌的とでもいうべきか。寧ろその親しみやすさが人気の理由なのだろうか。
次に2位の「ジェミナイツ」。双子エルフによるタッグのチームだ。
主な活動内容は荒事の鎮圧。連携による仕事の手早さが大きく評価されている。
助けられた感謝の声もあるが、それ以上に格好良さへの賞賛のコメントが多く、目立つ。
そして1位は「ダーティ・ホイール」。魔動二輪を駆るチーム。
拠点としてはこの場所のチームではないが、高い機動力で活動は広域に渡り、戦力の必要な拠点制圧への助力として多大な戦果を挙げている、とある。
直接的に助けられた人はいないのもあってか、制圧した時の強さと迫力が熱く綴られている。
そして後半には犯罪分布や傾向といった、実用情報のコーナー。
さっき発生リストを見た時も思ったが、やっぱり盗難が多い。
次いで傷害とはなってはいるが、複数該当ありとの注釈。
盗難を伴わない傷害の割合だとか、そういった細かい情報は誌面からは読み取れない。あくまで注意喚起の目安といったところだ。
そして最後の数ページは具体的な注意喚起…という名目で、内容的には要注意組織の動向。
ピックアップされているのは「鈍色仮面」と呼ばれる集団。その名の通りの仮面に加えフード付きのローブを着、正体が分からない一団だそうだ。
…総じて印象としては、ニュース誌というよりは娯楽誌に近い。
狡猾に悪事を働く集団と、阻止する英傑達の対立構造の。
それでも折角の情報源だ。2冊目、3冊目とやや早読みで進めていく。