112話 英雄特訓②
「おかえりぃ。どーだった? 初日の感想は」
どうにか戻ってきた拠点、ふらつく足でどうにか2階まで降りる。
「あ、あれを一日中…ですか…?」
時間は丁度2本の針が頂点に来る頃。実働時間の折り返しで、今日の所はギブアップだ。
テムスさんが事を片付けに行ってる間は足を止めれるが、1件あたり30秒もかからず戻って来、休める時間とは到底言えないほど。
結果、4時間ほぼ通して走り続け。ここ数日あまり動いてなくてなまってた反動もあり、足の限界が来ていた。
「まーあいつ、おかしいくらいに体力はあるからな。午前中持ちこたえただけでも十分だよ。
それで、もう一人の方は?」
「ラディはまだ余裕あるから、もう暫くついていくって。」
「…へぇ、術士だと心配してたけど、やるじゃん。」
テムスさんには「今日はもう休んでおけ」と言われたが、それはそれで手持ち無沙汰。
半ば形式上とはいえ雇われの身である以上、無為な時間を過ごすのは中々に耐えがたい。
「えっと、何か手伝えることは……。」
「んー、流石に事務処理は任せれないし、特にねぇな。
何か頼めそうな事あったら言うわ。」
「…了解です。」
ラディに先を行かれる焦燥感。だが体力的なところはすぐ解決できるものでもない。
なら、それ以外で今できる事は何かないか、と。
それに何よりも、暇だ。
何かしなきゃと辺りを探っても、あまりにも物が少ない部屋。本棚の本は「6にんの かみさま」という絵本と…表題すら読めない異国の本の2冊。
近場に図書館でも無いものかと探してはみるが、手元の地図には載っておらず。
…昨日は気付かなかったが、それとは別に本棚の脇に積み重ねられた冊子の束。
紐で纏めて縛られているその状態は、まだ使う物には到底見えない。
「これ、少しお借りしても?」
「ん、あぁ。処分予定のモンだ、別にいーぞ、好きに読んでも。最後戻しといてくれれば。」
見た所、ここの報道誌のようだ。実生活から遠い歴史書だとかより、こういうのの方が今は丁度いい。
少しでも多く街を知ろう。内情的な面でも。
小分けの一束の紐をほどき、まずは1冊目を手に取る。