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11話 宿の夜②

「じゃあ、俺が暮らしてた村の事からだ。」

 気持ちを切り替え、言葉を続ける。

「俺の出身はこのレミレニアの南、レーニスとの間にあるんだ。

 ポーロ村っていってな、まぁ場所で見ちゃうと大きな街はどこも遠い、辺境の地ってやつだ。


 とはいえ、レミレニアとレーニスのほぼ丁度真ん中で、他にもイルラスクルグやネックスージャ…と、割と大きい街に囲まれた中継地でな。冒険者や行商人たちのいい中継地として、外との交流自体は盛んだったんだ。

 だから外の話はたくさん聞いた。手伝いがてら、数えきれないくらいの冒険者の自慢話や、見てきた世界の話を聞いた。

 今の世界の事だけじゃなく、歴史書とかも行商人から買ったりして、情報を仕入れた。古い英雄の伝記なんかもだ。

 その中でも特に、英雄アスレィの伝記に惹かれてな。家業を手伝って必死にお金貯めて、泊まりの行商人に持ってないか聞いて回ったりしたな。」


「『英雄アスレィ』…とは?」

「そうか、そこからか。

 約700年前、まだ世界が今ほど平穏じゃなかった頃だ。

 点在する国々は武力で牽制しあい、ひとつ均衡が崩れたら戦争になりかねない、そういう時代だ。

 各国は軍事力を整えるのを最優先にし、魔物対策は極限まで最小限にされ、民間への被害は絶えず。そこに現れたのがアスレィだ。

 アスレィはそんな緊迫した中でも国々を渡り歩き、魔物狩りの武勇を残していったんだ。歴史に残る程の大物でも悠々と討伐するアスレィは、その脅威に晒されてた人にとって、英雄だったんだ。

 特に最後の武勲の竜災討滅は──」

 流石に逸れ過ぎたかなと、一息入れて話を戻す。

「とにかく、自由な冒険の象徴がその『英雄アスレィ』だ。

 世界を周って各地で名を残すほどの活躍をしたアスレィは、ずっと憧れだったんだ。

 同じように世界を冒険して、あわよくば歴史に名を残したい。それが夢だったんだ。」

「冒険って、そんなにいいものなのです?」

「あぁ。伝聞で知るだけだった街を散策し、伝説を残した地を巡る。

 そうして直に見て、触れる。そこで初めて知る事もある。

 未知に触れるのはいつだって楽しいし、謎を追求するのはもっと楽しいよ。」

「…そこまで夢中になれるほど、ですか?」

 そう言うラディの姿形は偽りでも、その視線には本物を感じた。

「こうして色々聞くのだって、未知の追求、でしょ?」

「…あっ。」

「つまりそういう事だ。理由なんていらない、ただ知りたい。それだけで十分。」

「…なるほどです。…冒険、か……。」

 曇るラディの声に、昔夢を否定された時の心境が重なる。後先を考える前に、次の言葉に移っていた。

「ラディは、何かこの地に縛られる理由とかあるのか?」

「いえ、とくにはないです。ラディはふりーだむなのです。」

「じゃあさ、一緒に冒険者しないか? もちろんラディが良ければ、だけど。」

「いいんですか? どれだけ助けになるか、わかりませんが。」

「戦力としても助かるし、冒険はしてみるべきだよ。

 それに…一人はちょっと心細かったし。」

 パーティを組もうにも、村の連中には冒険の気は無かったし、泊まりの冒険者たちは既に組んでたりで頼み込むのはお門違いだったしで。

 最終的には酒場任せで組む事にはなるだろうけど、やっぱり多少なりとも知り合えた相手が居る方が気が楽だ。

「いいのであれば、こちらこそ、よろしくです。」

「じゃあ本格的な活動は明日からだ。忙しくなるぞ。」

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